表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

偽らざる祭り

私、のんびり死体と申します。

えー今回はですね。

この、此方郡彼方町で行われております。


いつわらざる祭り」


この祭りの紹介をさせていただきます。

日本でも、特に古い歴史を持つ祭りでございまして。


ご神木の周囲ですね、町民総出で踊りながら、ぐるっと廻ります。

ご神木は、これは桜でしょうか。

非常に大きな、立派な桜です。


正面に参りましたら、大きな声で、自分の心から望んでいることを。正直にですね。

正直にご神木にお伝えし、五穀豊穣を祈願するというお祭りなんですね。


じつは、この祭り、日本3大奇祭に、選ばれそうとか、選ばれないとか言われるくらいの。

えぇ、壮大な祭りなんですよ。


では、さっそく様子を見てまいりましょう。


ピーヒャララ♪ ピーヒャララ♪

ピーロリ ピーロリ 


祭りばやしが鳴っている。

皆一心不乱に踊っている。


そして、ご神木の正面、そこで叫ぶのだ。

心から、本当に望むもの。

それを、叫ばなくてはならない。


偽れば神罰が下り、本心を叫べばご利益がある。

何かに祈りを捧げるということは、リスクがあることなのだ。


最初は、小さな子供か。

可愛らしい、5歳くらいの浴衣を着た女の子が、正面にたどり着く。


「わたしはぁ、智君と結婚したい~」


皆が和む。

やはり、子供は純粋でいいな。

智君であろう、幼い男の子が照れている。


次に、50代くらいの女性が続く。

先ほどの少女の、おばあちゃんなのだろうか。

清楚にまとめられた髪の、上品な女性だ。


「私は、10代のイケメン俳優のうなじを嗅ぎたい」


一瞬、皆の笑顔がひきつる。

子供たちは、ポカンとしている。


しかし、次第に拍手が起こる。

正直さというのは、時に残酷である。

彼女は、誠実にそれを乗り越えたのだ。

やはり、品のいい女性というのは、侮れないな。


あぁ、次は30代くらいの、眼鏡の男性か。

すこし、お腹がビール腹になっている。

酔っているのだろう、顔は少し赤い。


「自分はぁ、女性専用車両が空いているのに、普通の車両に乗ってくる女に、説教したい」


よく見ると、彼は震えている。

勇気を振り絞ったのだ。

説教だけでいいのか。

優しいやつだな。


ご神木を見ると、僅かに揺れているように見える。


次は、老齢の男性だ。

職人のような、厳しそうな顔をしている。

浴衣を着崩すことなく、ピシッと擬音が聞こえてきそうな、凛々しい姿だ。


「私は、えっちな動画に出てくる、時間を止めるスイッチが欲しい」


おぅ。

おやっさん、そんなことを考えていたのか。

あんたとはいい酒が飲めそうだ。


ご神木が、目に見てわかるほどに震えている。


アンタモ、サンカシナサイヨー


あっ、私もですか。

では、僭越ながら。


そういって、私も参加することになってしまった。

どうしよう、本当のことが言えるだろうか。

あぁ、そろそろ順番が来てしまう。


言えるだろうか。

いや、言わなければ、いけない。

ここで自分に正直になれなければ、ずっと自分を偽ることになる。


のどが渇く。

これを言うことで、俺が失うものは多い。

今まで誰にも、言ったことはない。


俺の番が来た。


「俺は全裸で、30代くらいの人妻に、そんなことしたらメッって、怒られたい」


ご神木が、ぶわっと音を立てて、花を咲かせる。

舞い散る花弁が、俺を讃えてくれる。


上記で物語は終わりです。以下、おまけです。



祭りの喧騒が落ち着きを見せる頃、老齢の男性が近寄ってくる。


「一つ聞きたいのだが、よろしいか」


彼の面持ちは真剣である。

緊張しながら、うなずく。


「例の、あの30代の人妻だが、服装はどんなだね。」


思いもよらぬ質問に、赤面しながらも答える。


「こっコンサバです。オフホワイトのトップスに、カーキのプリーツスカートです。」

「ヤース、メーグミのイメージです」


なるほど、そう高齢の男性は頷く。


「入学式に着るような、カチッとしすぎないスーツに、白のブラウスはどうかね」

「胸には、白のコサージュをつけて・・・」


彼は、一つ息をついて


「30代のアダーチ・ユーミのイメージで」


俺の体に、稲妻が走る。

思わず、彼に握手を求めた。


2021年 夏 最高の友と共に


この物語を終える。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 微笑ましい願望から、ちょっとアレなものまで……。皆色々ですね。こんな暴露話ばかり聞かされるご神木のストレスは、大変なことになっていそうです。 [一言] もしこのお祭りに参加できるのなら、「…
[良い点] 正直って、良いですね。 [一言] 一生働かなくても生きていけるだけの金が、欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!
[一言] めっちゃ笑いました! 何でだろう、のんびり死体さんが書く微エロは、悲哀もあって笑えて、面白いんですよねー。「究極のおっぱい」のお話とか。それに、激エロじゃない所も、いいですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ