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うかれ気分に裏切りの花を

#目撃者の家


 農家の母屋。ただし家も新しく、ここへ通じる農道もアスファルトで舗装されている。思ったほどの田舎ではない。

 縁側(えんがわ)に面した座敷(ざしき)でこの()の夫人の話を聞く、西条とミサエとトモミ。息子2人を乗せた車を運転中、頭上から強烈な光が差して夫人は意識を失ったのだという。


夫人「気がついたら車は停まってました。私はハンドルを握ったまま、子どもたちも後ろのシートでキョトン、って。一瞬かと思ったんですけど、時計を見たら2時間も経ってて、急に怖くなってきて……」

西条「気を失ってる間にUFOに誘拐されたのでは?」

夫人「さあ。お医者の先生にも催眠術っていうんですか?」

西条「ええ、退行催眠。」

夫人「それを勧められたんですけど、なんだか恐ろしくってお断りしてるんですよ。でも、こうして人に話すことで気が楽になるって先生もおっしゃるものですから。すいません。お話しできるのはこのくらいなんです。」

西条「ありがとうごさいました。プライバシーは必ず守らせていただきます。」

夫人「他の人にとっては面白いんでしょうけど私たちにとっては……。今でも子どもがヘリコプターなんかが上を通るとおびえるんですよ。」


 西条がメモをとる手を止める。ミサエたちも、なんだかいたたまれない気になりうつむいてしまう。



#ホテルへ戻る車中で


 西条が運転するランドクルーザー。助手席にミサエ。後部シートにトモミ。


西条 「どう思う?」

ミサエ「どうって?」

西条 「あの奥さんが見たのは本当にUFOかな。」

ミサエ「どうかしらね。でもあの奥さん自身、医者にかかってるって言ってたでしょ。」

西条 「じゃあ幻覚だと? でも、子供たちも見てるんだぜ。」

ミサエ「せまい車の中で母親が錯乱すれば、パニックも簡単に伝染(でんせん)するわ。集団ヒステリーの発生しやすい状況だもの。」

トモミ「ミサエちゃんって宇宙人とか信じてないの。」

西条 「こりゃ驚きだな。じゃあなんでこの仕事してるんだい?」

ミサエ「仕事だからよ。」

西条 「じゃあ君らが横取りしたのは……」

ミサエ「取り返しただけよ。」

西条 「その取り返した……アレは何だっていうんだ?」

ミサエ「ああいうものをこしらえて喜んでる連中がいることだけは、認めざるを得ないわね。」

西条 「君も同じ考えかい?」

トモミ「さあ、そういうこと深く考えないの。ミサエちゃんに誘われたからこの仕事やってるだけだし。でもアタシは事実だったら、どんなことでも受け入れるよ。」

西条 「でも何が真実かなんてわからないだろ?」

トモミ「うーん、そうねえ。それ知りたいからこの仕事やってんのかな。」

西条 「どうやら君は、まだ僕に近いみたいだね。」

トモミ「えへへ。」

ミサエ「まったく。影響されやすいんだから。」


 ムクれたトモミがミサエにちょっかいを出す。車内で彼女らのちょっとしたジャレ合いが始まる。



#ホテルの部屋


 帰ってきた3人。

 ミサエがドアを開けて部屋に入ると、やにわに革手袋をはめた手で口を塞がれる。それに気づかずに入ってきたトモミも同じ目に遭う。

 室内に数人の男たちが立っている。

 手には銃を持っており、ミサエたちを拘束した男たちも含めて、全員が同じ格好をしている。

 黒いトレンチコートを着て黒い帽子を被った、黒づくめの男達。

 ミサエは暴れながら、自分の口を覆った手を両手で引き剥がす。

 そのまま西条に飛び掛かろうとするが、黒服の男に押さえつけられる。


ミサエ「騙したわね!!」

 西条、黙って肩をすくめる。


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