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いい女に寝覚めのキスを

#ミサエのアパート


東京近郊のワンルーム・マンション。

 フローリングの部屋には、ベッドとあとは数えるほどの家具しかない。1食分のゴミがそれぞれコンビニの袋に入れて、部屋の隅に並べてある。

トモミがやってくる。


トモミ「ミサエちゃん、いるー?」


 ミサエはベッドの中でまだグズグスやっている。

 昨夜、山中で乱闘を演じたときのままの服装でシーツにくるまっている。


トモミ「まだ寝てんの?もうお昼だよ。」

ミサエ「~~~~~~」

トモミ「にしても、いつ来ても女っ気のない部屋ねえ。」

ミサエ「うるさい。」

トモミ「まだ課長んトコ、顔出してないでしょう?」

ミサエ「……」

トモミ「ねえ、携帯鳴ってるよ。」

ミサエ「ふーん。」


 ミサエは寝返りをうってまた眠りに入ろうとするが、トモミが電話に出る気配を感じて慌てて飛び起き、止めに入る。


トモミ「えー?なに?もう出ちゃったよ。ハイ、ハア……居ます。」


 携帯をミサエに渡す。


トモミ「課長。」


 トモミの頭をハタキながら、電話に出るミサエ。


トモミ「イッターイっ!」

ミサエ「ハイッ。ハイ、すぐ行きます。」



#回収課のオフィス


 ビルの1フロアーを占める広いオフィス。午後の忙しい様は普通の会社を思わせるが、ここは偽装だ。

 窓際の管理職用デスクの前に立つミサエ。そのすぐ後ろにトモミ。

 デスクに座った人物が口を開く。


課長 「作業は終了したのか?」

ミサエ「はい。」

課長 「なぜすぐ報告に来ない?」

ミサエ「……」

課長 「あまり心配を掛けさせるな。」

ミサエ「すいません。課長。」


 課長の酷薄こくはくそうな口調が、言葉のやさしさを裏切っている。

 知らぬ顔で、オフィスの皆がこちらに注意を向けているのがわかる。


課長 「報告を聞こうか。」

ミサエ「隕石の墜落現場から落下物を不法に持ち出そうとした者がいたので、回収に時間が掛かりました。午前1時に作業に入り、4時に終了しました。」

課長 「妨害者は外国人か?」

ミサエ「日本人でした。海外の機関から委託をうけた業者と思われます。」

課長 「向こうから何か反応があるかもしれんな。しばらくは気を抜くな。」

ミサエ「ハイ。」

課長「回収物は?」

ミサエ「保管倉庫DF350に収容しました。」

課長 「受け入れ先が決まったら、受け渡しに立ち会ってもらうかもしれん。」

ミサエ「わかりました。」

課長 「それまでに、といっては何だが、調査をしてきてくれ。」


 課長がデスクの上に放った新聞には、「北海道でUFO騒ぎ」という記事が踊っていた。



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