オリンピックの開会式に雨は降らない―気象操作官の打ち明け話
天気は何年も前から決められている。オリンピックの開会式で、天気がいい印象しかないのはそのためだ。毎回、イベントごとに最適の天気をアレンジしている。
何か悪い事件が起こる前触れには、暗雲が立ち込めるように、低気圧を手配し、水蒸気量を微妙に調節しながら、気温を決定する。この匙加減を間違えてしまうと、暗雲どころか土砂降りとか大嵐になってしまう。
天気を決定するときに、最も重視するのは、物語が進行するうえで、いかに効果的であるかということだ。明るい出来事の背景には、抜けるような青空を用意する。苦しい受験の場合には、大雪を降らせることが多い。毎年、大学入学共通テストの日に必ず大雪が降るのは、こういう理由である。ただし、このことを鋭く指摘する教育関係者がいたこともあり、あまり例外なく毎年降らせることは、控えたほうがよいという指導が入った。世の中には、いちいち気付きすぎる人がいるものである。
天気予報が当たりすぎると、天気が完全に計画的に決定されていることが露呈してしまう。それで、ごく最近までは、あえて偽の情報を流して、天気予報が外れるように細工していた。毎回当たる天気予報は、不自然だからと配慮していた時代の話である。今となっては、なんともお気楽ないい時代だったと、懐かしく思い出すことがある。
実は、近頃、予定された天気に手を加えて、勝手に天気を変えようとする輩が増えている。そういう人を主人公にしたアニメ映画が大ヒットして、その認知度はさらに上がってしまった。最近では、模倣犯が出没しており、予定通りの天気を実行するのは、年々難しさを増している。
いずれにせよ、天気を完全に計画的に実行できるのは、数年程度の短期的な話である。現在のところ、地球規模の大掛かりな気候変動まで完全にコントロールできる技術は、まだ確立されていない。むしろ、細工をすればするほど、地球全体の温度は上昇してしまい、もう誰にも温暖化は止められない状況になっている。温暖化に由来する大雨や水害は、しばしば制御不能に陥っており、予定範囲を大幅に超えるような甚大な被害をもたらすようになってきた。幹部は正式には認めていないけれど、実はあそこまで大きな被害にする予定ではなかったという事例が、昨年だけでも5件ほど発生している。
そのうち、天気が超能力者によって完全に計画的に決められていたことなんて、誰も思い出せなくなる日が来るかもしれない。
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