膝枕
「おいで、ここだよ」
ポンポンと、彼女が自分の膝を叩いている。
夜、仕事終わりで帰ってみると、同棲している彼女がすっかりとくつろいでた。
1LDKのアパート、ろくに座れるようなところも少なく、どうしてもリビングがたまり場のようになる。
そこでテレビを見ながら座っていた彼女が、俺に気づくと、そんな風に誘ってきた。
思わずふらふらとカバンをその場に放り出し、横になりそうになるが、まずは、と思い直す。
「……ただいま」
「お帰り」
スーツだけでも片付けよう、そう考えてジャケットやネクタイを外し、ズボンもハンガーへと掛ける。
それからカッターも着替え、ようやく待っている彼女の元へ。
「おいでぇ」
彼女も待ってくれていたようで、そこでようやくポスンと彼女の膝へと頭を置く。
「あー、なるほどなるほど」
「何がなるほどなの?」
俺の言葉に、思わず彼女は聞いてきた。
「いや、昔から不思議だったんだよ、膝枕ってどうなんだろうって」
「ふんふん」
「でもさ、やってみると分かったわけ。これ最高だわ」
「やってもらってよかったでしょ」
「そうだな、毎日してほしいぐらいだな」
「毎日は面倒かな。今日は気まぐれだし」
「気まぐれでもいいよ、したいと思ったときに、俺と樹があってくれれば」
多分そうなるだろうけど、俺は一応は彼女へとそう伝えた。
彼女もそうね、と考えつつも言った。