どきどき探索、氷の精霊遺跡・その4
エンカウントがない。
平和なのはいいことだ。
足元は平和とは程遠いですけどね!
通路といくつかの小部屋。
ところどころ生活の名残が残っていたのは、遺跡の中の警備員とか? あるいはなにかの役目、神官の類いの休憩所か。
今のところ、情報源になりそうなものはない。
地味に困る。
「……やっぱり気のせいじゃねぇなぁ。死体の臭いに混ざって、知らねぇ匂いがする。たぶんよ、それが襲撃者が持ち込んだ“何か”に関係してるんだろうが……」
入り口を開けたとき、ハンターたちが口にした違和感。
困ったことに、祝福メガネを起動しても見つからない。
でも、わかる。
普段が女神さまの加護頼りの俺にもわかる。
なんだ?
イヤな感覚だ。
時計を確認。一時間くらいか。
警戒しながらだから、距離はそれほど進んでないだろう。
指輪の効果が無ければ、吐く息も凍る世界。
やはり低温だけで、それ以外の脅威は特に無し。
迂闊にその辺を素手で触ったら貼り付いて大変なことにはなるだろうけど。
「おっと。ここ、部屋が隠されてるな。音の響き方が片寄ってる。さて……うん、悪いなデュラン。こりゃ俺の専門外だわ。よろしくな~」
魔力と霊気による細工。
さすがのレンジャー役もお手上げか。
あ、ちゃんと自力で解除しますよ?
経験値、稼がないとね!
小部屋の中、なかなか清潔。
一応イスやらテーブルはあるけれど……うん、普通に使える状態。
明らかにおかしいよな?
「戦闘が専門の私でもわかるぞ。仮に使用されていなかったとしても、これは不自然過ぎるだろう」
わからんな。
微生物が……たぶん死滅してるから、劣化しない?
日光も当たらんし風もないから可能性はゼロじゃなかろうが。
そもそも。
「なんとなぁく……少し前まで使われていた感、あるわよね? ほんのりと、微かにだけれども。霊気、感じるでしょう?」
さぁ、キナ臭くなってきたぞ?
ま、それはさておき。
一旦休憩しましょ。
ちゃんと術式を用意してますからご安心。
なにせマイナス40度だもの、イスなんて座れたもんじゃない。尻が凍り付くわ。
ついでに取っておき。
フフーン! チョコレートでどやぁッ!
「おぉう!? お前、よくそんなもん持ってたなぁ~。……はー、旅の途中で仕入れたヤツ。だよなぁ、ルジャナじゃ超が付く高級品だもんなぁ」
「気軽にチョコが買える国があるのか……文化の違いなんだろうが、その、衝撃というかなんというか……」
気軽に。
まぁ気軽ですとも。祝福で出したヤツだもの。
一応見た目は現地の入れ物に。
むき出しで持ち歩くのもアレだけど、まさか日本のパッケージなんて見せらねぇべ?
んー、程よい甘さとカカオの香りに癒されるわー。
できればコーヒーも飲みたいところ。
缶コーヒーでも出せればいいけれど、ちとオーバーテクノロジーだもんな。
俺にしてみりゃ魔法のほうがビックリドッキリなんだけど。
「それにしても、今さらなのだけれど。他のダンジョンとは何か……違うわね? 私の盾、これと出会ったときもずいぶんと苦労したのだけど、その……ゴメンなさい、巧く言葉が選べないわね」
無言の同意かな?
ジンガーもキルシアも思い当たるご様子。
素人の俺でも違和感あるくらいだし、やっぱプロはそうなるよね。
せめてこう、なにかヒントになるものとかあれば……。
……。
見つけちまったよ……。
すみっこの壁の下のほう。
パッと見ては何もないように見えるけれど、メガネが反応していますねぇ。
「デュラン? どうした?」
ちょっと待ってね。
これは……日記に使われてた呪い文字と同じか。
どれ。
霊気を反応させて……浮かび上がらせて……。
はい。
どれどれ?
きをつけろ
しんでんは めいき ゅうにぬりつぶ された
みんなとりこまれた
な かまもくわ れた
あいつらもくわれた
いきてい るやつはぜ んいんのみこま れた
ころしあ いはたすけ あいになったけどおそ かった
もうおれの からだもほとん ど めいきゅうにくわ れてる
せいれいは
にげろ
あれは えさを もとめている




