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じっくり解読タイム

「すまん。いくつかの単語は拾えるのじゃがな、そもそもワシの専門は考古学ではないからな……うん、すまん」


 しれっと視線を外すジジイ。


 楽し気に待ってたサラはジト目。


 仕方ないなー。


 さて。



 ふむ。ふむ? ふむー。


 なるほど。


 この遺跡、どうやら守護精霊を奉っていた様子。


 この集落はその精霊の力を借りて……奇跡のような力を使う……えーと、精霊使いの住んでいた場所。


 特に外界との交流を断っていたとかもなく。


 ハンターギルド、商人組合、術師協会とかと同じ。


 なるほど。


 しかし、解読は祝福メガネで楽勝なんだが……ページめくるのがメッチャ気を使うわこれ。


 術式でゆっくり、ゆ~っくり動かさないと粉々になりそう。




 うん。


 それもおかしな話だ。


 ちゃんと管理されていたならともかく、こんなボロボロなのに文字がハッキリと見えるものだろうか?


 さぁて、この文字にはいったい、なにが起きてる~?


 ファンタジー世界だからな、なにか……。


 ……。


 あぁ、なるほど。


 人間の執念とやらに神秘が混ざるとこうなるのか。


「血液を媒介にした呪いに近い文字……か。言われてみれば、たしかに微かに……ほんとうに微かにだが、霊気を感じるのぉ~」


「その、いかにも急いで書いただろう部分はわかりやすいですねぇ。それだけ、その一文を残した人の……強い意志が残っている、ということでしょうか?」


 つまりはそれだけの出来事が起きたワケだ。


 さて、その内容とは?


 ……。


 …。




 うん。ドンピシャだな。


 おそらくはこの記録が残されたであろうその日。


 この地に襲撃があった。


 守護精霊の力を我が物にしようとした連中によって。


 まさか、とは思ったけれどルジャナ帝国ではなかったよ。


 よかった。


 んで、この地を護るためにルジャナ帝国の兵士たちも応戦したようだが……どうやら敵さんはなにか、強力な手札を用意していたらしい。


 一切の容赦なく。


 遺跡の中まで後退して迎撃を試みたが、結果は。


 この記録を残した人はなんとか隠れてやり過ごしたものの、すでに致命傷だったと。


 侵略者たちが犠牲になった人々をまとめて“なにかした”のを見届けて、そしてこうして……か。


 ふーん……。




 ちょっとお行儀悪いけど、霊気サーチ。


 うん。


 霊気の残滓に恐怖はある。けど、それ以上の怒り。


 何をされたのかはわからなかったようだが、仲間たちの命が弔われてたのではないことは理解していたのだろう。


 たぶん、耐えたんだな。


 無駄死にするよりも。


 命が尽きるまえに、後世に残さないと……って。


 強かったんだなぁ、この人は。


 少なくとも俺よりはな、はるかに強いだろうね。




 いいでしょう。


 残されたもの、受け取ったからには見て見ぬふりはイカンぜよ。


 記録の最後が“仲間や自分の敵討ち”ではなくて“守護精霊の安否”を願い託すってのも気に入っちゃった。


 あいにく俺の力は女神さまからの借り物だけれど、だからといって本物の想いに応えちゃいけないって決まりはないさ。


『くっくっく。まさか守護精霊の名が出てくるとはな。幾度この世界の巡りが繰り返されたかわからぬが、精霊どもはつくづく人間を気に入っておるのじゃな。善きかな善きかな!』


 うむ、なんだか知らんが女神さまもとにかくよし。


 精霊。


 精霊かぁ。


 ゲームでも漫画でもラノベでもお馴染みだが、果たしてファーストコンタクトは友好か敵対か。


 コイツはぁ、楽しみじゃな?

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