わくわく冒険タイム、遺跡ダンジョン・その5
よさげな建物で小休止。
晴れていても雪景色、風は冷たいので壁はありがたい。
さて。
俺もゆっくりコーヒーでも飲みたいけれど、そうも言ってられない。
祝福メガネを装備して、建物を調べる。
言葉には説得力が必要。そのための材料探しだ。
石造りの大きめの平屋。
木造のテーブルにランプらしきもの。
羽ペンに、たぶんインクが入っていたであろう植物性の容器。
本棚。
どれもこれも劣化が激しいが、期待できる。
これが原始人的な野性味溢れる集落だったら大変だったかな。
「わたくしたちも、遺跡の側に転移門を置いて管理いたしますが……そういうフンイキとは違いますねぇ。なんと申しますか、こぅ……生活の残り香を感じますねぇ」
ハンターたちもダンジョンの側に拠点を作るのは知っている。
だが、それと比べると生活感が段違い。
つまりはここで暮らしていた人たちが……うん? サラ、休んでなくていいの?
「問題ありません。それに、デュランさんが何をなさるのか気になりましてぇ。異変、あるんですよねぇ?」
うーん、この鋭さよ。
やっぱ祝福を控えたのは正解だな。
「わたくしたちを呼ぶモノと拒むモノ、その両方が存在する……ですか。それはそれは……ますます、えぇ、わたくしの知る範囲でありますが、ますます普通ではありませんねぇ」
そしてそれが気のせいかそうでないかを確かめるために調査中……と言ってみる。
なにかないかな~……っと。
おや。おやおや?
「机の上にペンと雑記帳。別に不審な点はございませんが……ええ、殴り書きが、ページが破れるほど力を込めたのですね。そしてこの黒いのは……血痕でしょうかねぇ。それらがなければ特には気になりませんでしたねぇ?」
いかにも、緊急事態感。
ざっくり鑑定。
……。
紙質、インクの劣化、その他もろもろ。
少なくとも二千年前後。
よくまぁ原型保ってんな?
それも含めて異常なナニかが発生したのかもしれないね。
「二千年前後、ですかぁ。そうですねぇ……聞いた話では、ルジャナ帝国の現在の国土の基盤が出来上がったころ、でしたかねぇ。現代との大きな違いは―――」
「精霊信仰が最も盛んであったころじゃな!」
おや、ネルガさん。
「つれないのぅ。ワシも混ぜてくれたまえよ。それで……ふむ、これまた古い言語で書かれておる、な……うむ……むぅ……」
「………。」
………。
「ふむ。なるほどな。……デュラン君、任せた」
おぉ~い?




