わくわく冒険タイム、遺跡ダンジョン・その4
避難小屋で一泊。
そして翌朝、さらに吹雪の中を進む。
「吹雪、おさまる気配がないわね。フフッ、この有り様だもの、遺跡の周囲はどれだけヒドイのかしら。楽しみね?」
楽しみかぁ?
しかし、遺跡の周囲か。
進行方向。
に、対して横殴りの暴風。
遺跡からではなく、横からの風なんだよな。
もしかすると、遺跡のところは晴れてるんじゃないかな。
いわゆる、台風の目。
普通の、というか地球で起こる台風は規模がデカイ。
なので歩いて数時間程度では違いなんてわからんだろう。
しかしここは異世界。
魔力のある世界だぜ?
『使い魔でも飛ばせれば簡単にわかるじゃろうが……この中を飛ばすでは、祝福の術式を使わねば厳しいかのぉ~?』
現状、既存の術式で吹雪の中を進めている。
ならば、わざわざ女神の力に頼ることもあるめぇ。
自力で解決できるなら、自力で頑張るようにしないとね!
………。
……。
…。
やったぜ。
空が青い。
いやぁ、現地が晴れててよかったなぁ!
……と。
まぁね、能天気に喜んでばかりもいられないよね。
なにせ。
「ふぅ~む? 綺麗に境目になっちょるのぉ~。それこそ、まるでギヤマンの壁面があるが如く。これを自然現象と許容するのは……ちと、難しいのぉ! あっはっはッ!」
綺麗に吹雪の断面、見えてますねぇ!
「それで、どうする? この非常識な吹雪を操っている、かもしれない何者かが……あの、目の前の遺跡にいるかもしれないワケだが」
「間違いなくヤベェのが待ってるだろうが……耳が千切れる思いでわざわざ来たんだ、俺は是非とも中を拝みたいねぇ」
「魔導を歩む者としては興味が尽きないところではあるが……ふむ。デュラン君はどう思うかね?」
俺?
俺は完全に中に入るつもり満々だったけど。
興味本意はもちろんのこと。
吹雪の影響でお隣の国、シラヌイの国との交易が停滞しているとのこと。
急ぎのとき、あるいは自分のことで手一杯ならともかく。
今は余裕あるからね。
ちょっとくらい人助けしてもバチは当たるめぇ?
ひとまず接近。
遺跡の周囲はなにか……集落とでもいうべきか。
人が生活していたらしき跡が残っている。
跡、という表現が適切なのかはわからないけど。
見たところ、結構まともに建物が残ってるし。
ふむ。
霊気サーチ。反応、無し。
妖気サーチ。反応、無し。
魔力サーチ。反応……遺跡の入り口らしき場所へ。
なんとなく。
なんとなく……誘われている?
少し、危険な匂いだね。
聞いた話では、この遺跡を見つけたという報告があったとき、それは見間違いだと言われたらしい。
なぜなら、この辺りはクラスBらへんのハンターたちの狩り場だから。
こんなデカイ遺跡を見逃すハズがない、と。
だから、遺跡の存在を確認したとの報告はずいぶん驚かれたそうだ。
突然、遺跡が現れた。
地元の人たちにしてみれば、そんな感覚。
フラグ、だねぇ。
誰も認識できなかった遺跡。
それを、下級ハンターのパーティーが偶然見つけた。
そして、上級ハンターたちが存在を確認して。
で、この吹雪よ。
いかにも人の接近を拒絶してます感の強い、ネルガさん曰く“攻撃的”な吹雪。
それで、いざたどり着いてみればウェルカムですよ。
ゲームなら確実にボスキャラというか、敵対的なナニかが待っているパターンだねぇ。
さぁて、どうする?
ネルガさんあたりに相談するにしても、まさか異世界の娯楽の知識とは言えないし。
言葉、選ばんとなぁ。




