わくわく冒険タイム、遺跡ダンジョン・その3
寒さ、なんとか。
ただ気温が低いだけじゃない。
魔力の吹雪。
なかなか手強い。
祝福を使えれば楽勝なんだけど、女神さまの加護は自重中だからね。
でもまぁ、試行錯誤して組んだ式陣がムダにならなくて安心。
指輪。ナイス、俺。
さて、そんなふうに自画自賛するくらいの余裕はあるのだけど。
そんな余裕がないヤツもいる。
……ジンガー、大丈夫?
「耳がイテェ。キンキンする……」
レンジャーなジンガー、しかも犬人だけあって耳がいい。
そんな優秀な耳は、小さな音でも聞き逃さない。
小さな音でも。
小さくないんだよなぁ。まわりの音がさぁ。
氷同士の衝突する音がヤバす。
自分の周囲でガラスの小皿をパリンパリンやってるのを想像してみよう。
うるさいし、ウザい。
「いや、ある程度は覚悟してたがよ……これは、ちと、キツいぜ? なんつーか、普通じゃねぇな……」
そうきたか。
どうやら音の質が違うらしい。
俺はこれしか知らないけれど……。
「ジンガー君のいう違和感は、魔力の性質の違いかもしれんのぉ。どうにもな、この吹雪の性格はなんとも攻撃的じゃ」
いくら魔力乱流とはいえ、痛すぎると。
地元の人がいつもと違うという。
と、なれば。
「うむ。おそらくは遺跡に何かしらあるのは正解、ということじゃて。しかし……遺跡ダンジョンとは長い付き合いだがのぉ、このようなことは初めてよのぉ……」
ルジャナ帝国、遺跡ダンジョンがたくさんあるそうな。
だからハンターもマジシャンも、そして帝国兵も。
みんな遺跡ダンジョンには慣れている……ハズだった。
「みなさま、もうすぐ避難小屋にたどり着きます。どうかはぐれぬよう、お気をつけください」
……。
…。
小屋、到着。
最初にネルガさんたちに会った場所。
とりあえず火だな。
「本来なら物資を補充しておくのだが……そもそも吹雪に立ち入れなかったからな。少々もったいないが、薪が無いからな。仕方あるまい」
キルシアが魔導水晶を暖炉にポイッと。
あとは部屋が暖まるのを……待つのも面倒だな。
そよ風~フワリ~。暖気を循環!
よし。
「―――かぁ~、あー、疲れた~! ってか耳がぁ~! デュラ~ン、回復してくれぇ~」
床に敷いた毛布に転がるジンガー。
耳が良すぎるのも考えものだな。
犬耳に手を当てて、治癒の式陣を発動。
「あ゛あ゛ー……いやざれりゅぅ……ふぅ。助かったぜ。さすがに洞窟の中はいくらかマシだな」
軽口だけど、表情は軽くない。
そうとうキテたんだなぁ。
……本番はこれからなんだけど、大丈夫なんだろうか?
とりあえず、今日はここまで。
時間でみれば、まだまだ昼間なのだけど。
油断大敵。
うん。
クラスDのふたりがホークアイとラムステラに怒られてる。
早い時間に探索を中断したことに文句をつけたから。
……ホント、よくまぁ同行を許したな?
なんだか心配になってきたなぁ、いろいろ。




