まったり共同生活開始・その1
案内された宿。
宿……と、いうより寮だな。寮。
料理したり食事したりマッタリしたりな共有スペースを中心に、独身エリアと家族エリアに分かれてる。
ひとつ屋根の下に大勢が。
これはプロミネーズ地方に限ったことではなく、ルジャナ帝国では一般的な造りなんだとか。
ふむ?
アレかな。
暖房とか、資材・資源の節約のため、とか。
なにせ年中雪景色らしいからな。
しかし。
なんというか……女性率、高いな?
「亭主どもはまだ働き先から帰ってこないし、子どもらもどっかで遊んでんだろうさ! ま、いつものことだよ。あっはっは!」
豪快に笑うおばちゃん。
時間は夕方になるころだけど、まだ外を歩ける程度には明るい。
うん。
たしかに、これくらいなら男の子は帰ってこないだろうなぁ。
「デュランくん! 空いてる部屋でしょ? 案内してあげる!」
「いこーいこー」
「ちょっと! アナタたち! ……もうッ! デュランさん、ゴメンなさい。あの子たちも悪気はないんだけど……元気過ぎるというか、その、言葉づかいが……」
大丈夫。
呼び方なんて好きに気楽にどうぞどうぞ。
しかしアレだな。
歳上の、大人を“くん”付けで呼ぶところとか、いかにも女の子って感じ。
逆に。
「わたしが大人っぽい、ですか? ええと、ですね。わたし、もうすぐ13才になるんです。そしたら中央区の学園に入学するつもりなんです」
なるほどねー。
日本でいうと中学生になるころ。
なんか納得だわ。
部屋の造りは、良い意味で普通。
窓のガラスが分厚いのは防寒かな?
んー。
ベットに机。あとタンスと……ランプか。
風呂とトイレも共有スペースね。
とりあえず荷物を置きまして。
どうしようかな?
いつものようにコーヒー無双でもしようかと思ったけど。
子どもがいる。
子どもなら……コーヒーよりも。
うむ。
と、なれば牛乳が欲しいところだけれど……あるのかな?
雪国だし、家畜の事情も違うだろうし。
「ミルク? うん、あるよ! 牛乳じゃないけどね!」
牛乳じゃない?
「はい。乳牛はこの辺りでは飼育していませんが、代わりに雪山羊からミルクをとっているんです。雪山羊といっても、魔獣の一種なんですが」
ほう! 魔獣とな!
なんでも古くから家畜として世話してきた歴史があるとか。
性格は活発だが人懐っこく、しかも賢いと。
ちなみにお肉はとても食べられたモノではない、と。
『共存するために進化した結果、とかだったら笑えるのぅ!』
気合い入れて肉質を落としたのか……。
恐るべし、生きることへの執念。
小さなレディーたちに手を引かれ食料倉庫へ。
魔獣のミルク。
転生前だって牛乳しか飲んだことなかったからな。
ちょっとワクワク。




