旅立ち、もうひとつ
どうも皆様、こんにちは。
サミルニール・エレと申します。
………。
はい。
けっこう前に術師協会にデュランさんを勧誘した者です。
これでもクラスAのマジシャン、協会の幹部です。
元、ですが。
デュランさんがスパイと疑われ、その影響で除名処分になりました。
しくしく。
はい。
実は特に困ってません。
術師協会、正直なところ私にはもう退屈な場所になっていましたので。
だからこそデュランさんに声をかけたのですが……まさかこんなことになるとは。
あれです。
協会まで疑われたら困るからと切り捨てられたワケですね。
えー、と。
一応、私もそれなりに貢献してきた自負がありました。ので。
国境を越えるための書類だけ貰っておきました。
さて、私もぼちぼち旅に……おや。
「おう、お前か。どうしたそんな格好で? フィールドワークたぁ珍しいな」
騒ぎの当事者のひとり、ボルバンさんでした。
どうやら王都から解放されて戻ってきたようです。
私は……かくかくしかじか。
「まるっとうしうし、ねぇ。そりゃ災難だったな。しかし、そうかぁ。デュランがいないなら、せめてお前さんの意見を聞きたかったんだが」
ふむ?
なるほど、件の“仮面の救世主”とやらが使った不思議な技について。
ざっくりと聞いた限りでは……そうですね。
「どうだ? なにか心当たりはあるか?」
いいえ、まったく。
広範囲と対象識別。
それだけでもかなりの高等術式ですよ?
「そうか……そういえばデュランのヤツ、ここを去る前になにやら面白ぇことしてったらしいじゃねぇか?」
あぁ……あれはスゴかったですね。
召喚術式は研究段階だったのに、まさか完成形をあっさり目撃することになるとは。
「氷の妖精かぁ。俺も戦ってみたかったなぁ」
少々、意外でした。
気にかけていたわりに、なんだかアッサリしてますね?
「……まぁ、な」
……旅人ならば、ですか。
彼の目的は術式の研究。
旅はその手段であり、この街は一時の休息でしかなかった。
たしかにそう言われては納得するしかないでしょう。
ハンターたちの中には感傷的な人たちもチラホラ。
私も正直なところ、ちょっとだけショック。
ですが。
彼が、デュランさんが術式の研究の旅を続けるならば、いずれは再会も叶うでしょう。
では、懐かしの故郷へ帰るとしましょうか。
魔導学院都市ストディウムへと。




