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ばっちりバトル! クラスBハンター・斬鉄のボルバン

「悪いな。こんなヤツらだが面倒みてたこともあってな、見捨てるワケにもいかねぇんだ」


 両手持ちの剣、クレイモアだっけ?


 ビシッと構えるボルバン。


 そして。


「ボ、ボルバンッ! よく来たッ! 早く俺たちを助けろッ!! すぐにソイツを殺せェッ!!!」


 とことん残念なヤツらめ。


 しかしそれを苦笑いで済ませるあたり、やはりこのオッサンはタダ者ではないようだ。




 面倒みてた、か。


 もしも……たとえば森の牙のハンターたちが暴走したら。


 うん。


 あまりいい気分はしないな。


 まして、同じハンターならともに過ごした時間もそれなりだろう。


 英雄の剣が道を踏み外したとき……ボルバンの心境は。


 うわ、背中のまん中あたりがゾワっとすらぁ。


 なけるぜ。




 で。


「それで、お前さんは何者でなんのために王都で騒ぎを起こしたんだ? あぁ、ちなみに俺はこの国のハンター、ボルバン・サーバインってモンだ」


 これはこれはご丁寧に。


 何者かはともかく。


 目的、目的ねぇ。


 目的ならついさっき終わらせたようなものだけど。


 そうだな。


 個人的に、フィンブルムの頂点にいる戦力に興味があった。という設定でひとつ。


 とてもガッカリでしたよ、と。


「そうかい。だったらもう用事はないだろ? 大人しく帰りな……と、言いたいところなんだが。そういうワケにもいかねぇんだな、これが」




 実態はともかく、クラスSトップのパーティーとクラン。


 その面子を潰されるというのは、国としてもギルドとしても問題なんだそうな。


 政治と外交。


 故に、俺をこのまま逃がすワケにはいかないと。


 むむむ。


 それは申し訳ないことをした。


 そこで転がってるアホどもはともかく、ギルドの顔にまで泥を塗るつもりはなかった。


 これについては素直に頭を下げないとね!


 で。


 そういうことならお相手いたしましょ。




「話のわかるヤツだな、お前。そういうの、キライじゃないぜ? ―――出番だァッ! “パワーグラインド”ッ!!」




 おおぉぉッ!!??


 まさかのパワーアップッ!?


 武器が豪華にッ!


 鎧が具現化したッ!


 そしてボルバンの能力もブーストしたッ!


 いや、だけど、この感じは。


 ……やっぱり違う。


 このオッサン、普段は力を抑えてたなッ!?


『昼行灯というヤツじゃな。武器による能力強化を抜きにしても、少なくともクラスAハンターのレベル。それに』


 ボルバンが持っているのもエーテルウェポンっぽい。


 しかし、今、オッサンは武器の名前らしきものを口にした。


 英雄の剣たちとは違って。


 この流れ。


 間違いなく使いこなしてるヤツだ!


 ……おお、テンション上がってキターッ!




「―――フッ!!」


 ムリだ。俺の眼では。


 祝福に身を任せるしかない。


 速い。


 そして鋭い。


 パワーファイターかと思ったが、かなりのバランスタイプっぽい。


 流れるような動きで連続攻撃。


 うん。


 コレだよコレ! こういうのを求めてた!


 はっはー。


 案の定、反撃のタイミングわかんねぇ。


 ならば。


 霊気の糸に祝福を重ねる!


 さぁ、ボルバンの動きの先に回り込めッ!




「―――チッ、さすがに巧いな。あのバカどもをまとめて黙らせただけはある。さしずめ、広場全てがお前さんの射程距離か。だが……なぁッ!!」


 ギアを上げてくるかッ!?


 いくら女神さまの加護が無敵とはいえ、俺の判断力には限界がある。


 一応、防御系は油断していないつもりだけど。


 手応え、ヤバい。


 掌を超えて腕まで痺れそうだ。




「うるァァァッ!! ―――ぐッ!?」


 つぁッ!?


「「うわぁッ!?」」


 俺の糸とオッサンの大剣。


 高まった霊気が衝突したことで衝撃波が発生した。


 くう~!


 いいねぇ、痺れるねぇ!


 危うく体勢を崩すところだった。


 ギャラリーに少し被害は……あー、大丈夫そうだな。


 よしよし。


 さて、ここからどう展開を運ぼうか。


 せっかくだし、もう少し相手をしてほし―――わぁおッ!


 と、っと! とぉッ!?




「惜しい。もう少しだった」


「まぁ、あの状態のボルバンさんと互角ですからねぇ」


「フッ……さすがとしか言い様がないな」




 包囲、ね。


 ギリギリまで気配を隠していたあたり、コイツらもかなりの実力者か。


「さっきも言ったが、お前さんを放置するとイロイロとマズいんでな。ギルドとしても手段を選んでられねぇんだ。悪く思うなよ?」


 ひゅー、おっさんってば悪どい笑顔してくれちゃって。


 しかし。


 この世界での戦い、魔獣はともかく対人戦はまだまた経験値が足りてない。


 この状況、俺の判断力で処理できる気がしないなぁ。


 一応がんばってみるけどさ。




 ……。




 うん。アカンわ。


 攻撃は食らわないけど、ここからどんな祝福を重ねればいいのやら。


 考えてる暇がない。


 そもそもボルバン以外もエーテルウェポン持ってたし。


 名前呼んでパワーアップしてるし。


 こりゃどうにかして逃げないといかんな。


 しかし普通に離脱しようとしても難しいかな。


 と、くれば。


 またまた切り札使わせてもらいますぜぇ~!




 まずは糸を消し去る。


 手元から操っていたモノはもちろん、広場に巡らせていたモノも回収。


 回収ってか、砕けさせたんだけど。


 ハッタリ効かせるための暗い赤の粒子が空間を漂う。


 その様子にハンターたちが一瞬、身構えた。


 その反応は、好都合。




 空間を祝福。


 対象、霊気。


 条件、戦闘濃度。


 効果、束縛と衰弱。


 範囲、霊糸の残滓最大外周。




「「――――――ッ!?」」




 ハンターたちが地面に押さえ付けられる。


 ギャラリーはこの光景、不思議だろうな。


 自分たちも暗い結界の中に入っているのに何も影響ないんだもんな。


 んで。


「ぐ、が、あぁぁ……ッ!? コイツはぁ……ッ! ―――つァァァッ!!!」


 ボルバン、立ち上がるか。


 なんとなくそんな気はしてたけど。


 オッサンほどではないけれど、他のエーテルウェポン持ちのハンターたちも立ち上がれそうな気がしなくもない。


『ワシらの時間停止と似たような原理じゃな。霊気のガードをフルパワーで強化して結界に近い属性を持たせておる。意識しているのか経験則かはわからぬが、大したものじゃ』


 んふー。


 楽しいなぁ。


 チート転生の最大の障害は退屈だからな。


 しかしこうして可能性を目の当たりにすると、まだまだ精進しないといけないことがわかる。


 油断をすれば、終わる。




 ではでは。


 油断することなく逃げるとしようか。


 エーテルウェポン。


 予定とはちょっと違ったけれど、その脅威は堪能できた。


 それ用に、祝福も考えていかないと。


『グローインドの娘たちは、名前を呼ぶ前に倒してしもうたからなぁ。帝国のサムライは、恐らく本来は護りに秀でた能力ではなかった……のかもしれん』


 チートだけでなく運にも恵まれてた、と。




「ま……て……逃がす、か……よ……ッ!」


 待てと言われても。


 んー。


 まぁ、再戦の約束くらいはしておこうかな。


 ギルドの面子を潰すつもりはなかったしね。


 今回は俺の時間切れ。


 だから、この結果は引き分け。


 決着は、いずれ。




 あとは世論をどうするかだけど……そこまで世話してらんないね。


 巧いこと誤魔化してちょーだいな。

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