イライラは溜め込まない・その5
ひとりくらい、女神チートの力で時を止めようとして窒息しかける転生者がいてもいい。
自由とはそういうものだ。
「ったく、油断しやがって……おい、テメェ、まぐれ当たりが一発入ったくらいでゴアァッ!?」
ったく、油断しやがって。
「はぁッ!? 普段偉そうにしといてだらしないわねッ!! ここはアタシに―――ッ!?」
必殺、テーブルキック!
「~~~~ッ!!??」
術式を展開しようとしていたところへ、ちょうどいい大きさのテーブルがあったので蹴ってみた。
んー。痛そう。
テーブルだし……と、手加減テキトーだったんだけど。
膝、直撃。
『しっかり構えて立っておったからな……皿骨、砕けたかの?』
南無三!
……。
今回の目的は力試しの類いではない。
ゴールドナイツを黙らせること。
そのためにはリーダーである英雄の剣たちをボコボコにするところを見せ付ける必要がある。
なので……えーと、こういうの、クランハウスっていうんだっけ?
俺あんまりMMOとかいうオンゲーやらないから詳しくないんだよねー。
PVP系転生者ならもっと巧くイロイロ……って、それはまず置いとこう。
まずは英雄の剣のメンバーを外へ蹴り出したワケだが。
これは、なかなか。
連中にダメージは入ってない。
それは俺が攻撃系の祝福を起動していないのと、彼らの装備している防具の効果と。
それはいいんだけど……反応が鈍すぎる。
今の俺の本体の能力は、ハンターならクラスCの下位にギリギリ届く程度。
その俺の攻撃に反応できていないのは大問題ですよ?
それにしてもせめて踏ん張るくらいしろよ。
実のところ噂は噂として、それなりに期待していたんだけどなぁ。
気になること、もうひとつ。
周囲の視線がとてもトゲトゲしてる感。
それは俺には向けられていないのだが、それでも感じるくらいにアチコチから飛んできている。
つまりは。
『日頃の行いじゃろうな。おヌシには……否、人の身には連中に絡み付く陰気を察することはできぬだろうが。あぁ、そうだ、止めておけ。アレを知覚するのはおヌシがイレギュラーであることを含めても無理だ』
どんだけ~。
なに?
悪意が亡者の姿になって絡み付いてる?
この場にいない……過去から染み付いている悪意?
撒き散らした不幸。
これまで奪ってきたモノ。
それらは相当な量になるだろう、ねぇ。
うへぇ。
もしかしなくても。
いつの間にか集まった人たちは、俺が英雄の剣のメンバーたちを、その、アレですかね。
倒すとかじゃなくて“終了”させちゃってほしいと?
『よかったな。不手際が起きてしもうても、周囲は味方になってくれるだろうぞ』
う、う~ん。
さすがにそこまでは……。
困った。
犠牲になった、であろう人々には同情する。
しかし復讐の代行はちょっと。
魔獣の解体してるだけで顔をしかめる俺にはムリ。
うまい具合の落としどころ見つけないとヤバいぞコレは……ッ!




