イライラは溜め込まない・その2
クラスSランク1・英雄の剣
すべては遺跡ダンジョンで強力な武器を手に入れたところから。
まだクラスCのパーティーだったころ、エーテルウェポンと呼ばれている特殊な能力を持つ武器を手に入れてから。
その武器の力で成り上がりに成功しちゃったあたりからおかしくなった、らしい。
俺なんか出世とかメンドクセーとしか思わないけれど、上昇志向とやらを持つ人間にはそうではないのだろう。
………。
武器ひとつでそんなに変わるもんなのか? と、ちょっと疑ってたんだけど。
情報を集めた感じ、どうやら使用者の能力を高める効果もあるらしい。
まぁ高めるといっても装備中だけらしいけど。
つまりベースの能力は変化なし。
クラスSと呼ばれていても、本人たちの実力はクラスCレベルなんだとか。
……と、酔っぱらってグチってるハンターたちが言ってた。
ただの負け惜しみかもしれないけれど。
………。
同族嫌悪という言葉、あるじゃん?
自分と同じようなヤツだからこそムカつくってヤツ。
武器の力で実力以上の好き勝手な振る舞いをする英雄の剣のメンバーたち。
女神チートに頼りきりで好き勝手に生きる俺。
まさに同族。
いや。
連中も、少なくともエーテルウェポンとやらを入手するまでは努力していただろう。
つまり、何も苦労してない俺のほうが格上。
フフフ。
しかし嫌悪感あるかと聞かれたら全く無いんだよね。
だって直接なんかされたワケちゃうし。
つまりは。
つまりは、彼らは運が悪かった。
………。
王都の賑わいはさすがだね。
帝国に遊びに行ったときもアレだったけど、やはり王城があって城下街があって街があって下町があって。
パッと見たところは平和そう。
なんだけど。
目的地はクラン・ゴールドナイツの縄張り。
案の定というかなんというか、近付くにつれて空気が澱んでるというか濁ってるというか。
あー、うん。
いたわ。
上のクラスのハンターが、下のクラスのハンターに絡んでる。
どうやら難癖をつけて金を巻き上げようって感じか。
別に俺には関係ないことなんだけど……さ。
やっぱりさ、ストレスってのは適度に発散しないと健康に悪いじゃん?
ステルス解除。からの~ッ!
「だからヨォ、面倒見てやったんだからそれなりの謝礼をすんのは当たり前だゲボァッ!?」
「「―――ッ!?」」
めり込む拳。
倒れる男。
ふーむ?
様子を見る感じ……ハカセ、実験は成功であります!
『うむ。天晴れじゃ! 激痛と身体麻痺か。実際に物理的な損傷は無いが……感覚がそれを知らしめる以上、この男にとって地獄であることには変わらんな』
命を奪うのはゴメンだ。
ヘタレと言われようとも、そういう覚悟とか責任とか。
そんな余計なモノを背負うのなんてお断りだ。
ならどうするか。その答えがコレ。
女神の加護によるリミッター。
死者を出すことなく、しかし容赦も無く。
「くそッ! なんだコイツ! いきなり現れやがったぞッ!?」
「テメェ、俺たちをゴールドナイツのメンバーと知ってんだろうなッ!?」
「ヘンテコな仮面なんぞ付けやがって! 覚悟はできてんだろうなァッ!!」
ゾロゾロと出てきたなー。
コイツら全部そうなのかな?
……ものすごく嫌そうな顔してる連中、いるけど。
考えられる可能性は……無理矢理?
『さっきの様子を見る限り、有り得る話じゃなぁ。マゼンタとやらも言っておったが、やはりそれだけの権力を有しておるのだろう。ならば、所属を拒否できぬハンターたちがおっても不思議はない』
だよねー。
ま、そういう手合いはなんとか避けて戦うとしましょうか。
ゴールは奥に見える……酒場? っぽい施設。
さすがクラスSクランの拠点。豪華じゃん?
さぁ。
それではチート転生者らしく、無双タイムといこうか!




