イライラは溜め込まない・その1
危惧していたことは起きてなかった。
まぁね、最速最短で帰ってきたからね。これで間に合わなかったら凹むよね。
あ、でも通信とかそういう技術ってどうなってるんだろ?
ふむ。
今度コッソリ調べておこうかな。
いや~、何事もなくてよかったよかった!
……とはならないのが世の中ってヤツなんだなぁ。
ハンターギルドの奥のテーブル。
一目見ただけでわかる。
ズーン……という効果音が見えるくらい落ち込む森の牙のメンバー。
賑やか担当まですっかり落ち込んでらぁ。
一体なにが―――おっと。
「おかえりデュラン。気になるのはわかるが、まずはコッチヘ来い」
マゼンタ?
「アイツらな、お前から貰った指輪を……その」
ふむ。もしかしてなくしちゃったのかな?
まぁハンターの仕事の内容を考えれば可能性はあるだろうし、なくしたものは仕方な―――え? 違う?
……他の、ハンターのパーティーに取り上げられた、とな?
「依頼で王都に向かったときにな。輸送の仕事で他のベテランもいたから……大きなトラブルにこそならなかったんだが……な」
そういうのもあるのかぁ……。
ハンター同士のトラブルねぇ……。
こういうとき、ギルドって仲裁とかしてくれないのか?
……してくれないのか。気まずそうに目をそらされたもんな。
「いや、そうではなくてな……その、相手が悪くてな。王都を拠点にしている、ゴールドナイツというクランがあって」
それは。
「ん? そうだ。その英雄の剣がリーダーをしている…よく知っていたな。でな、そこに所属しているパーティーが相手ではな。最悪、コルキュアス家まで連中に因縁を付けられかねん。それくらい、クラスSクランというのは面倒なんだ。少なくともこの国ではな」
忌々しいという感情タップリのマゼンタ。
どんだけ嫌われてるんだよ。
しかしなー。
そうか、連中かぁ……。
「デュラン。お前が森の牙を可愛がっているのは知ってるが、早まったマネはするなよ。つながりを理由に余計にアイツらの立場が悪くなる可能性だってあるからな」
その辺は組織ならではの面倒さだな。
まぁいい。
マゼンタがそう言うのなら素直に従おう。
ただ、それはそれとして新しい指輪を用意してやるくらいはいいだろう?
「そうだな……不注意でなくしたならともかく、今回のことはさすがに……な。素材、どうするんだ? なんなら私が手伝ってやるぞ? 依頼とは別に引き受けてやろう」
んー。
頼んでも……いや。
気分転換の散歩のついでに探してくるとしよう。
マゼンタにお礼を言って街の外へ。
素材探しは嘘ではない。
忠告に従うといったことも嘘ではない。
デュラン・ダールは王都へは向かわない。
さて。
お楽しみの用意、始めようかな……。




