ちくちく疑いの眼差しが・その3
お礼を言ったら気にするなと言われた。
借りを返しただけだから、と。
借り、ねぇ。
そこまでしてもらうほどのこと、した覚えないんだけど。
「それを言うなら、わたくしたちも……ですよ。彼らがスノール領で不埒な真似をするのはいつものことですので」
わかりやすくヤレヤレといった様子でため息を吐くエルフのおねーさん。
煽りバトル強そうだなー。
さて。
ゴールドナイツの連中が日頃の行いで嫌われているとはいえ。
俺がスノール領の人々にとって恩人とはいえ。
案の定、問題はそんなに簡単には解決しない。
何故ならば俺が住所不定の旅人だから。
「ハンターギルドは基本的に中立な立場です。なのでハンターではないデュラン様ひとりのためにフィンブルムと……国と事を構えるわけにはいきません。もっとも、ハンターの個人的な私用について口出しする権限もございませんが」
ハンターたちが勝手に俺を助けるのは知らな~い♪ ってコトね。
んー、んんー、ん~。
ちょっと、なぁ。
彼らは善意で俺を助けてくれる。
が。
チート持ちとしてはそういう良い人を食い物に……じゃないけど、なんて言うのかな。
俺のために危ない橋を渡らせるのは気が引ける。
八方塞がりなら土下座して感謝するぐらいありがたいんだけど。
「お前がそれなりの実力者なのはわからなくはない。だがクラスSクランを甘く見ないほうがいい」
おや、ガノッサじゃまいか。
「おぅ。話は聞いたぜ。で、だ。ゴールドナイツはよぉ……パトロンに貴族が付いてる。そもそもメンバーの数も多いからな」
今日のことはクランメンバー全員にあっという間に広まるだろう、と。
そして……やっぱりね。
メンツの問題か。
ま、リーダーがクラスSランク1って言ってたし。
フラッと現れただけのよそ者にナメられたら黙ってられないだろうさ。
だがな。
俺を心配するなら、なおさらソレを言うべきではなかったな。
「……すまん。ハッキリ言う。そのほうが俺たちスノール領のハンターにとっては好都合だ。たしかにお前ひとりで事に当たるなら、そんで解決できるならそれが一番いいだろうさ。だがよ……」
まぁまぁ。
伊達や酔狂で世界を巡ってきたワケじゃない。
ハンターにはハンターの流儀や手段があるように。
俺には俺のやり方があるさ。
……と、ハッタリかましておけば納得するかな?
『まぁ、ワシもアイディア一緒に考えてやるけぇ。なんとかなるじゃろ! ……たぶん』
「へぇ、言うじゃないか。そこまで自信があるってんなら、アタシらは大人しく手を引こうじゃないか」
「そうかぁ、オマエの場合はどうにもならなくなったら旅に出ればいいのか。なるほどな。よしッ! フィンブルムから逃げるときは手伝ってやるぜッ!」
うむ。
これでこの街のハンターたちが巻き込まれることは……。
……。
コルキュアス領の知り合いたち、ヤバいかな?
こりゃさっさと帰ったほうがよさそうだ。
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