ちくちく疑いの眼差しが・その2
「恩知らずのハンターが嫌われるのはどの国でも同じ、だと思いますよ。ハンターの昇級はイス取りゲームではありませんからね。もちろん、互いに高め合うという意味でライバル同士競い合うなんてことはよくある話ですけど」
助け合いはハンター同士のマナーというか、仁義というか。
他人を蹴落としてのしあがろうとか考えるヤツは、むしろ周囲から孤立する。
で。
どうやら思った以上に例の道具がアチコチから見つかったらしい。
もしもそれらが放置されていたら。
と、いうことでハンターたちは俺に対して恩義を感じているそうな。
疑いは……問題ない?
あー、自作自演にしてはお粗末過ぎると。
あとは……なるほど、工作員からも話を聞いたのね。
聞いたというか、あの道具を見つける手助けをしたということで、俺を危険人物と見なしているとの話が?
ふーむ。
もしかしなくてもデュラン・ダールは帝国のブラックリストに載っちゃう感じかな?
おっと、ハンター同士の舌戦はどうなったかな。
えーと。
どうやら帝国絡みの厄介事には、スノール家を中心にハンターギルドも協力しているらしい。
ただ、連中の……ゴールドナイツに所属するハンターたちはそれを断っていたそうな。
そこは自由意思なので、協力を断ったことそのものは何も問題はない。
が。
時折こうして首を突っ込んできて手柄をかっさらうマネをするらしい。
そりゃあ……なぁ。
そりゃ、地元のハンターにしてみれば面白くないわな。
「飼い犬がヒトの庭でキャンキャン吠えるんじゃないよッ! 帝国とのドンパチ怖がって王都にこもる臆病者らしく、貴族どもに尻尾でも振ってなッ!!」
歴戦の女戦士(俺主観)に一喝されて黙るハンターたち。
しかし連中だってそれなりの場数を踏んでいるだろうに、そんなに差が出るもんかね?
『あの女傑の言葉を借りるなら……そういうことなんじゃろうなぁ。ハンターの狩りや依頼とは違う、人同士の、国同士の命懸けの戦いを知るかどうか。魔獣は人間にとって脅威でもあろうがな、ホレ、奴らは悪意で人を狙うワケではなかろう?』
あー。
なんとなく、わかる。
こんな俺でも魔獣がそういう……なんと言えばいいのかな、感情というか意思というか。
そういう類いで人を襲うワケじゃないのは……感じている。
もっと本能的というか機能的というか。
なるほどねー。
ソレに比べたら、人間同士の戦いのほうがかな~り厄介だろうな。
スノール領のハンターたちの迫力には勝てなかったらしい。
ひとまず、そのゴールドナイツのメンバーは立ち去った。
ひとまず、ね。
帰り際、俺を睨んでいたからな。
正直、もう面倒でしょうがないんだけど。
面倒だけど、それと助けてくれたハンターたちへの感謝の気持ちは別。
とりあえずギルドに移動して話をしようかな。
もちろん仲裁してくれたお礼を一番最初にね!




