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黄金の獅子・その2

 何かがおかしい。


 カラザワのオッサンが侵入者の相手をしている。


 それはわかる。


 わかるんだが……。


「やはりカラザワさんの霊気ばかりが強く感じます」


 ミーシャの言う通り、オッサンの霊気しか感じない。


 いや、一応は侵入者の霊気もわかるっちゃわかる。


 ただその霊気はとても戦闘濃度と呼べるシロモノじゃねぇ。


 オッサンは適当に見えて仕事はキッチリこなす。


 しかも今はゼフィーがいるんだ、手を抜くってのは……。


「ユリアンさん、ちゃんと殿下と呼んでくださいよ。僕は別に構いませんが、兵士たちに示しがつきませんよ?」


 へいへーい。


 とにかく、だ。


 オッサンもあれで腕試しが好きな部類だが、それでもこんな場面で面白がるほど不真面目じゃない。


 となれば―――




 もうすぐオッサンが戦っているだろう訓練所へ着く。んだが……どうなってんだ?


「霊気がどんどん高まっていますね……クラスB、いえ、Aハンターと同レベル。まだ高まってます」


 オッサンが手間取ってるのは相手にそれだけの実力があったから、なんだろう。


 けど、ならどうして侵入者は最初からマジでやらなかった?


 オッサンの強さに抵抗を諦めた……なら今さら霊気を高める意味はない。


 そもそも、なんで霊気を高める前にオッサンは仕留めなかった?


 なんて悩んでいたら。




「ミハイル様ッ! ユリアン様ッ!」


「貴女は……カラザワさんに何かあったんですかッ!?」


「仮面です! 侵入者は例の仮面の仲間ですッ! お急ぎくださいッ!」




 くそッ! そういうことかッ!


 仮面の男の報告は聞いていた。


 これでも帝国三剣士なんて呼ばれてるんだ、戦いには自信がある。


 例えクラスSハンターが相手でも負けはしない。


 だがさすがに()()()()()()()に圧倒するほどの自信はねぇ。


 オッサンはオレやミーシャよりは数段上の実力者だが、それでも厳しいことに変わりはない。




 ……。




 これも油断っていうんだろうな。


 その光景を最初に見たとき、オレもミーシャも安心してしまった。


 オッサンの……居合いの構え。


 オレたち三剣士以外にも、ゼフィー……じゃなかった、殿下には優秀な武将や智将が集まっている。


 色んなタイプ、色んな強さのカタチがあるが、少なくともオッサンの居合抜きが最速……いや神速なのは共通認識ってヤツだ。


 相手もクラスSハンターに近い霊気だが、それでもオッサンの居合抜きには……ってな。




 だから言葉を失った。


 あの野郎、オッサンの居合抜きを()()()()()()()しやがったッ!!




 後ろに、あるいは横に動くならまだわかる。


 だがヤツは前を選んだ!


 当たり前だが、ほんの僅か、それこそ1秒以下の世界。


 タイミングを間違えれば即死を免れない状況でだッ!


 自信があるのかイカれてるのか、もしくは両方か。


 オッサンのほうは、辛うじて直撃だけは防げたようだが……。




「カラザワさんッ! 大丈夫ですかッ!?」


 珍しいモノが見れた……と、軽口を叩いて見せたものの。


 オッサンのマジの居合いを相手にアレは……ッ!


「ミハイルくん、ユリアンくん、後は任せてもいいかしら? おじさん、わりとマジで疲れちゃったよ。取って置きの居合いも避けられたし……はぁ、もう歳かな。いや、ホント、まいったねぇ」


 よかった。


 年齢ネタが出てくる程度にはまだ余裕があるらしい。


「カラザワさん、いっつもそう言ってサボろうとするでしょ? ダメですよ、逃がしませんよッ!」


「え、えぇ~? 今日はホントなんだってばぁ……」


 これも日頃の行いってヤツだな。


 だが……ミーシャもたぶん、わかってて言ってる。


 あの仮面ヤロー相手にオッサンが本気で参っているのを。


 ま、だからこそ引っ込まれたら困るんだけどな!


「はぁ~、もぅ、若人についていくの大変なんだけどなぁ~。っと、ワルいね待たせて。まぁそういうワケだからさ、ここからはマジでやるからさ。死んでもちゃ~んと成仏してね?」




「帝国三剣士揃い踏み、ね。いいね。しかし……お前さんたちを相手にこのまま素手で、ってのは……まぁ、失礼かな?」


 さすがに乗り込んでくるだけはある。


 オレたち三人をまとめて相手するつもりらしい。


 それだけの自信があるってことか。


 ……工作員からの報告でひとつ、マユツバものとして扱われている情報がある。


 もし、コイツがサソリの仲間なら―――




「「―――ッ!?」」


 は……マジかよ……。


 これが……これが伝説の“エーテルウェポン”か……ッ!!


 仮面の霊気が黄金に変わり、両手に集まって具現化した。


 それは霊気の強さとはまったく別の威圧感。


 ヤバい。理解しちまった。


 アレは……ちくしょう、そらクラスSパーティーが敵わなかったのも理解できちまう……ッ!


 オレたちが使っている―――ヤツにしてみればまがい物とは―――比べるのもバカバカしいレベルの差だ。


 ……オモシレぇじゃねぇか。


 伝説とやらがどれ程のものか、ご教授願おうじゃねぇかよッ!!




 オレも、ミーシャも、オッサンも。


 どちらかといえば“攻撃”を得意としている。


 本当なら慎重に戦うべきなんだろうが、ヤバい相手だからこそ後手にまわるワケにはいかない。


 長所を封じられて勝てる相手じゃないからな。


 お互いに、技の切れ目は感覚で理解している。


 そこをフォローしながら押して押して押しまくるッ!




 ……。




 さすがに……巧いな。


 手出しこそ抑えているが、こっちの攻撃もひとつ残らず捌かれている。


 だが主導権は貰った!


 このまま流れを―――




「……なんだ。同時じゃないのか……」




 ……なに?


 どういう意味だ?




「―――ッ! お二人さんッ!」




 こういうトコロあるからオッサンはなんだかんだで尊敬できるんだよなぁ。


 合図に合わせて下がったのと、獅子の仮面の気配が変わったのと、タイミング完璧なんだもんなぁ。


 黄金の霊気が穏やかに変化する。


 さて、今度はどんなビックリ技をやってくれるんだ?


「礼を言うよ。おかげで色々とわかったこともある。さて、そろそろ時間なんでな……」


 エーテルウェポンを砕いた?


 わざわざ武器を捨てるようなマネを?


 ……カラザワのオッサンから伝わる緊張感がハンパねぇ。


 仮面がゆっくりと構える。




「「―――ッ!?」」




 気のせいなんかじゃない。


 幻覚なんかじゃない。


 その場にいた全員が。


 オレたちも、兵士たちもハッキリと見た!


 ヤツの背後に現れた、黄金の獅子のビジョンをッ!!






「―――獅子の爪牙、その身に刻めッ!!」




「チィッ!! ―――吼えろッ!! 斬光剣狼ッ!!!」




 


 仮面の男から放たれた黄金の霊気。


 視界を埋め尽くす刃の群れ。


 それに呼応するようにオッサンが斬光剣狼―――エーテルウェポンの力を解放した。


 嵐と雷光を纏う、狼の幻影の咆哮が響く。


 獅子と狼。


 ふたつの獣がぶつかり合い―――。


 ……。


 …。


 


 ……防御は間に合った、のだろうか?


 オッサンが仮面の攻撃をとっさに迎撃したのはわかる。


 だが、その後の僅かな時間の記憶が無い。


 ……手加減、されたのか?


 衝撃は身体を貫いたらしく、立ち上がることはできない。


 けど、致命傷じゃないのもわかる。


 たぶんだが……少し休めば回復するだろう。




 他は……ミーシャはオレと同じ。


 兵士たちは……あー、まぁ、そうなるよなぁ。


 それでも死んでるヤツがいないのが救いか。


 ………。


 救い、なのか……?


 クソ……手加減されて……このザマかよ……ッ!!


 ただカラザワのオッサンだけが刀を構えて立ってるが……霊気が乱れている。


 ヤツの放った衝撃波を迎撃するのに相当消耗したようだ。




「やるな。ひとり残らず黙らせるつもりだったんだが……まさか相殺されるとは思わなかったよ。これはアンタの勝ちだな。俺は逃げるとしよう」




 一瞬だった。


 仮にダメージが無かったとしても、果たしてオレに追いかけることができたか怪しい。


「……あぁ~~~ッ!! 疲れたよぉ~~ッ! おじさんもうスタミナがスッカラカンだよぉ~~ッ! はぁ、明日は筋肉痛かなコレ……」


 おっさんはいつものように気の抜けた声を出す。


 けど……どれだけ普段を装っても、霊気の乱れが死闘による消耗を物語っている。


 ……お? ……っと、なんとか動けるくらいには回復したか。


 はは……身体が重い。ナイフ一本振り回せる気がしないな。


 とりあえず。


「……ありがとうございます。さすがユリアンさん、タフですね。よっと」


 ミーシャの手を引いて起こしてやる。


 やはりコイツも大きなケガは無いようだ。




 ……。




「グローインドの工作員が集めた情報は結局、全てが真実でしたね。エーテルウェポン……おとぎ話の類いだと思っていましたが、まさかこれほどとは」


 そして工作員が集めた情報に無かったことも判明したな。


「蠍と獅子と、他にはどんな仮面がいるんだろうねぇ。せめてもの救いは、帝国だけをターゲットにしてるワケじゃないことくらいかな」


 ブルム帝国とグローインド王国は交戦状態にある。


 その両方にちょっかい出してくるってことは……普通に考えればどこかの国が放った工作員だが。


「どうかなぁ~。だってあの強さだよ? 切り札にしたって……ねぇ? 情けない話だけど、ほんの数人が戦場に出てきただけで戦局変わっちゃうよ?」


「こんな回りくどいことをする必要性はあまり感じませんね。なら、彼の目的は……いえ、僕たちがここで悩んでも仕方ありませんね」


 それもそうか。


 オレたち武官がウンウン頭を悩ませなくても、こういうのが得意な連中に任せるほうがずっと効率的だな。




 やれやれ。


 またゼフィーの周りが騒がしくなるのか。


 いや。


 考えようではチャンスなのかもしれないな。


 ヤツの……ヤツらの狙いがオレたちの殿下ではなく、帝国そのものなら。


 他の継承者候補を潰してくれるかもしれない。


 ま、そうそう都合よくならないだろうが。




 しかし。


 伝説、か。


 もし、アレと同じ……までいかなくても、それに近い力を手に入れることができたなら。


 ……あー、ヤメヤメ。


 とにかく今は報告!


 そして寝たい!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「―――獅子の爪牙、その身に刻めッ!!」 >「―――吼えろッ!! 斬光剣狼ッ!!!」 獅子の爪牙刻めって、言ってるのに斬光剣【狼】は違うと思う。 語呂が悪くても斬光剣獅子、もしくは斬…
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