おかわりバトル! 帝国三剣士
撤退ラインをここに決めよう。
3対1という人数の不利ではさすがにさすがに……。
……な~んてことはもちろん関係ない。
俺の性格によるもの。
このままだと、延々と戦いが長引いてしまうかもしれない。
そうなれば被害が拡大する。
……向かってきた兵士を蹴り飛ばしたのは別でしょ。だって向こうから挑んできたんだし。
とにかく、俺が調子にノリ過ぎて周りが見えなくなる可能性。
それを考慮して、この段階を撤退ラインに設定しよう。
『ならばもう尻尾を巻いて逃げるのか? タイミングとしては自然な流れじゃが』
まさかぁ~?
さすがに盛り上がってきたばっかりなのに、ここで逃げちゃうなんてとんでもない!
サーチは完了している。
三剣士と呼ばれる、いわゆるネームドエネミーってヤツ。
せっかく揃っているのだもの、これはドドンッ! と戦わないと損でしょ~!
「ミハイルくん、ユリアンくん、後は任せてもいいかしら? おじさん、わりとマジで疲れちゃったよ。取って置きの居合いも避けられたし……はぁ、もう歳かな。いや、ホント、まいったねぇ」
「カラザワさん、いっつもそう言ってサボろうとするでしょ? ダメですよ、逃がしませんよッ!」
「え、えぇ~? 今日はホントなんだってばぁ……」
「ははッ! 信用ねぇなオッサンはさ。ま、これに懲りたら日ごろの行いを改めるんだな!」
「はぁ~、もぅ、若人についていくの大変なんだけどなぁ~。っと、ワルいね待たせて。まぁそういうワケだからさ、ここからはマジでやるからさ。死んでもちゃ~んと成仏してね?」
おおー、さらにフンイキ変わった。
となれば。
『こちらばかり素手では格好がつかんのぅ?』
だね!
……さて、帝国三剣士。
同時に相手取るにはこのままでは失礼ってなもんだ。
「同時に、ねぇ……ハッ! 俺たち3人相手にカケラもビビってねぇか。ま、そんな肝っ玉小さいヤツが殿下の城に乗り込むワケねぇよな!」
ロングソードのお兄さん好戦的。
レイピアのお兄さんは冷静にこちらの様子を見ている、かな?
よし。
「「―――ッ!?」」
『ほう。黄金の手甲か。獅子と金とはオーソドックスだが悪くない組み合わせじゃな。ワシは好きじゃよ、そういうわかりやすさ』
奇をてらうのも結構。
しかしながら、定番には定番のよさがある。
そこは忘れてはいけないと思います。ハイ。
………。
ふむ。
連携にも、色々あるんだなぁ。
いつかのクラスSパーティーはお互いにフォローするような動きに感じた。
でもこの3人はなんというか、交代?
なんだろうね、順番待ちしながら戦ってる感じ。
……あぁ。
そうか、同時に攻撃がこないのか。
3対1じゃなかったようだ。
一対一を高速で入れ替りながら続けてる感じだな。
『それぞれが能力が高いようじゃけぇ、互いに邪魔せんよう立ち回るとこうなるのかもなぁ。どうなんじゃろ? これはこれでアリかのぉ~』
少なくとも反撃のチャンスはもう俺にはわかんないね!
どうしよっか?
もう俺のキャパシティは超えてるから、祝福の力で反撃せんとあかんなぁ。
……お。
悩んでる間に向こう側が距離を。
仕切り直しかな?
フッ。甘いな。
こっちは続ける気なんてサラサラないぜ!
『なら、一発デカいのブチかまして逃げるとするかの!』
手甲を砕く。
もちろん意味は無い。
演出だよ、演出!
一応手加減はするけれど、万が一ってこともある。
本気で防御してもらえるように、ね。
イメージはできている。
中距離、広範囲、ただし火力は控え目に。
でも吹き飛ばすくらいしないと逃げるが大変だな。
『んー、んんー、んんんーッ! よし、調整完了じゃッ!』
おーけぇい!
構え!
「「―――ッ!?」」
よし、向こうも防御したな。
―――獅子の爪牙、その身に刻めッ!!
「チィッ!! ―――吼えろッ!! “斬光剣狼”ッ!!!」
『おおおおッ!!! 見たか!? 今の見たかッ!? やるのぉッ!!』
見たよ! 見たともさッ!!
祝福して繰り出した技を、広範囲に飛ばした衝撃波たちを斬りやがった!
スゲェェェェッ!!
メッチャカッコイイッ!!
やったのは侍のオッサン。
なんだよぅ、やっぱりスゲー強いんじゃんよぅ!
うむ……余は大満足じゃ。なんつって。
増援の若手二人や兵士たちの姿勢が崩れている中、刀を構えたままのオッサン。
まさに本気モードって感じ。
カッコイイ。
はぁ~。遊びに来てよかったわ~。
ま、このタイミングかな。
まずは素直にオッサンを誉める。
この力……手加減していたとはいえ、女神チートを防いだ。
ある意味これは俺の負けだろう。
そこはね、素直に認めないとね!
そして敗北を認めたらやることはひとつ!
それは……。
『それは?』
逃げるんだよぉぉぉッ!!
『あっはっは! それそれ、脱兎の如く逃げようか! ……しかし、これで時間稼ぎ、どの程度効果があるかのぅ。ゼロではないと信じたいところじゃが』
そこは殿下に期待するしかないな。
正体不明の敵。
それに対してどれくらい警戒のリソースを割り当てるか。
例えば、意味深で無意味な言葉で撹乱してもよかったのかもしれない。
が、それをやると領地を混乱させちゃいそうなんだもの。
そのせいでさ、冤罪で真面目に頑張ってる人がヒドイ扱いされるのは好みではない。
『これだけわかりやすい騒ぎ方をしたんじゃ、大丈夫じゃろ。後はフィンブルムに放たれた工作員どもに少しでも枷が付けば儲けもの、ぞ』
だな!
さーて、余計なコトしたくなる前に早く帰りましょ。




