がっつりバトル! 帝国の将・武人カラザワ
武器、考えるの忘れてたわ。
『獅子の仮面じゃろ? 素手でええんじゃないか? 素手っちゅうか、格闘で。爪でガオーって』
ありがたく採用。
回避はすべて祝福に頼る。
なぜならオッサンの攻撃は俺ではまったく見えないから!
見えないとは違うか。
見えるし反応できるけど、どう対応したらいいのかサッパリ。
それくらいこのオッサン、強い。
……違うね、俺がまじめに戦い方を練習してないだけだったね!
「むむ~? いや、まいったねぇ。まいったまいった。まさかこの歳で遊ばれるとはねぇ。キミ、攻撃と防御のバランス。ちょぉ~と露骨過ぎるんじゃない? さすがに手抜きが―――どわぁッ!?」
「なッ!? 速いッ!!」
「おいッ! カラザワ様が喋ってる途中にッ!!」
お、さすが。
この程度の不意打ちじゃ余裕で対応されるか。
一応、当たれば試合終了だったんだけどな。
触れた相手の意識を刈り取る、って効果を付与してたから。
「やるね。速さのことじゃないよ? いまの一撃、なにか仕込んだね? わかるよ、おじさんこれでもけっこう戦い長いから」
へぇ……。
これが戦士の勘ってヤツか。
『女神たるワシの力を察することは常人には不可能。しかし、それがもたらす悪意は別か。人の可能性とは素晴らしきものだな』
これはいい経験になるな。
そうか、祝福。
ステルスはともかく、他の部分は実力者相手だとこういうこともあるのか。
……はは。ヤベェ、ますます楽しくなってきちゃった。
戦いながら、ギアを上げていく。
昏倒の祝福は外した。まだまだオッサンには遊んでほしいから。
一対一。
誰にも邪魔は―――
「今だッ!」
「とぉぉぉッ!」
「てぇぇいッ!」
されてる~よ。
もう、しょうがないなぁ。―――女神さまッ!
『おうッ! バシッと受け取りぃッ!』
イメージした技を大まかに構築。
それを女神さまが微調整。
―――くらえッ! 人間砲弾ッ!
「ぎょッ!?」
「みゃッ!?」
「ぞぉッ!?」
飛び掛かってきた兵士たちを、オッサン目掛けて蹴り飛ばす!
もちろん全部外れて地面やら壁やらに刺さった!
でも大丈夫、死なない! 手加減したから!
なので遠慮なく……追撃ぃ!
「―――くッ!?」
お。
今の、当てるつもりで踏み込んだんだけどな。
攻撃系のステータスはクラスAのハンター基準くらいまで上げてるんだけどな。
足りないのはどっちかな。
能力か、能力の使い方か。
もしくは両方か? 両方か。
オッサンに何か言われた兵士が走っていった。
増援かな?
逃げるときのこと、そろそろ考えておかないとダメかねぇ。
『まぁいよいよなったらなぁ。……そうじゃ! アレ試そう、アレなッ!』
あー、アレ。
そうね、旗色が悪くなったら試してみようか。
実験はバトルの前に済ませておけってツッコミは野暮だゾ☆
「まったくさ、どうせならおじさんが居ないときに来てくれればよかったのに。そろそろ息切れしそうで困っちゃうよ、ホント」
喋りながらも手元は止まらない。
ベルトから鞘を外し。
刀を鞘に納め。
そのまま構えた。
なるほど、抜刀術ときたか。
「……あらま。勤勉なことで。一応、おじさんのとっておきだったんだけどなぁ」
軽口はそこで止まった。
余裕のある“やれやれ系”の笑顔も消えた。
マジで来るか。
なら、こちらも本気で潜り込もうじゃないか。
祝福の加護に命を全部預けよう!
………ッ!
次に俺が認識した光景は、拳の間合い。
左手の拳を、オッサンの脇腹へブチかます直前。
……あちゃー、ゴメンね女神さま。
『一瞬の……ほんの刹那、気を取り戻した瞬間を覚られ回避されたか。加減していた故、ダメージが無いのは構わんが、なぁ。ムフフー♪ ワシの加護の力も、まだまだ改良の余地があるのぅ!』
こういうの、その辺の魔獣相手じゃわかんないからな。
さて。
オッサンはどうなって―――あら。あらあら!
「カラザワさんッ! 大丈夫ですかッ!?」
「へぇ、珍しいじゃないか。オッサンが苦戦するなんてよ」
レイピア持ちのエルフと、ロングソード持ちのフツーの人間。
簡易チェック!
……あらやっぱり。お侍さんに近い実力者です。
そのまま3人で一旦下がる……ワケないよねーやっぱり。
それならそれで帰ろうかなとか考えてたんだけど。
オッケーオッケー!
第2ラウンド、始めちゃいましょうッ!




