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わくわく帝国潜入・その4

 刀。


 着物。


 犬耳……いや、狼系のオッサン。


 似合ってるじゃないか。


 うん、まぁ、あれだよ。


 高いところで風を感じながらの月見酒は別格でさぁ。


「あ~、うんうん。オジサンもそれ、わかるぅ~。色っぽいおねーちゃんの踊りとか賑やかな音楽もキライじゃないんだけどさ、この歳になると静かに呑みたくなるのよねぇ~」


 やはり声はのんびり。


 だが向けられている、であろう刀からは殺気っぽいモノを感じる……ような気がする。


 こういう飄々としたオッサンキャラは決めるときは容赦ないだろうからな。


 たぶん気のせいじゃないね。




「……で、さぁ。ひとつ聞いちゃってもいいかな? あ、お兄さんの正体明かせってハナシじゃないから安心していーよ」


 ほう。


 まぁ答えられる範囲なら答えるけど。


「うん。ぶっちゃけ今の今までお兄さんの気配、全然感じてなくてさ。見事な気殺だったんだけど……な~んで急に弛めたのかな~ってね。ワザとでしょ?」


 お、おぉ……!


 なんだろう。


 俺は今、ヤベェ強キャラと同じステージの上で遊べるのかもしれない。


 その事実で……その、はしたないのですが興奮してきました。




 理由。


 理由か。


 報告で、役者がそろってると知らされて我慢できなくて……なんて。


 どう?


「……へぇ。う~ん、いっちゃ悪いんだけど密偵向いてないんじゃないかい? 強そうなヤツとお楽しみたいって気持ちはわかるけどねぇ~」


 あらやだオジサマってば。


 これ、当たり?


 殿下はともかく、部下の誰かと派手にバトルしたかったんだけど。


 これなら付き合ってくれるかな。


 下の広場は……グラウンドっぽいな。


 オッサン、この下の広場って訓練所的な?


「ん? そうだよ。うん、でもお前さんを動かすのは危険な気がしてきちゃったな~。いや、ワルいね。おじさんもお仕事だからさ」


 いえいえ。


 そんなお気になさらず。




 ―――どうせ、あんたの刃は俺には届かないから。




 その刺突はきっと、スゲー技なんだろうな。


 ゴメンよオッサン。


 女神効果で回避余裕なんだ。


 滑るように落下。


 はい、落下してます。


 だって自動で体が動いただけですもの。




 次の一撃、どう来ると思う?


『落下地点で待ち構えてズバッ!』


 同感。


 そのまま受けてもいいけれど……。


 スタンッ、と壁蹴りで空中移動。


 案の定、下ではオッサンが刀を構えてた。


 ちょいと離れて着地―――おぉっと!


「おいお~い。今のタイミングも反応しちゃう? ……なるほど。前言撤回。お兄さん、密偵として超一流だわ。感じる霊気の強さと動きがぜ~んぜん一致しないんだもの」


 そいつは失礼。


 しかし……これはまた。


『気怠げな下がり目に無精髭。無造作に束ねた頭髪。服装だけはパリッとしとるが……アレじゃな』


 イメージとバッチリ一致してんなぁ。




「「カラザワ様ッ!」」


「あ~、やめときなさい。キミらじゃ戦いにならないよ。それより他の密偵を追ってちょーだい」


「「ハッ!!」」


 他の密偵?


 ……あ、そういうことか。


 だとしたらソイツらは運が良かったな。


『他にも潜入していた奴ばらとタイミングが被ったか。それならステルスを解除と同時に見つかったのも納得じゃのう』




 それでもギャラリーは残ってるけどな。


 まぁ目の前にいる俺を逃がさないためだろうけど。


 さ!


 よそはよそ!


 俺は俺!


 せっかくのシチュエーション、楽しもうじゃないの。


「この状況で楽しそうだねぇ~。若い、若いなぁ。おじさん、体力もつのかしら? ―――カラザワ、推して参るッ!」

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