わくわく帝国潜入・その3
第二皇子ゼフィランサスの情報を集めてみた。
一言でいうなら、主人公。
俺が国民ならぜひとも次の皇帝になってほしいぞ。
ラノベなんかではよく見る話。
民衆の生活を第一に考え、奴隷を嫌い、能力のあるものは身分問わず重用し、貴族だろうと下衆には容赦なし。
まぁ、なんだ。
この時点で素人目で見りゃ名君の素質アリアリです。
しかも文武両道、術式の扱いも上手いときたもんだ。
気性は穏やか。
これは母親の影響っぽいな。
第3夫人……皇帝の嫁だとなんだ? 皇后?
『皇后は第1夫人かの。第3なら側室じゃろうし、皇妃かのぉ』
へー。
その母親は支配下の国の王族らしい。
夫婦の仲は良好らしいが……まぁ、嫉妬されるよな。
もちろん本人も兄や姉からも嫉妬。
そんな環境からよくもまぁ……ご立派な統治者に育って……。
『まったくじゃのぉ……ホント、ワシら何目線なんだって話じゃが』
一瞬、まさか転生者かとも思ったけど。
それってこの世界に対してかなり失礼だよな。
だって、優秀な人間=現地人のワケがないって言ってるようなもんだし。
そりゃね、俺はこの世界を調子コキまくりで好き勝手に生きる決めたとも。
けど別にこの世界の人たちを見下したいなんて思っちゃいない。
それにイレギュラーなら女神さまの誰かが即対処してるはずって言ってるし。
おっと。
そんなことはどうでもよろしいのだ。
んー、どうしようか。
天才か、努力家か。
どちらにせよ、部下が敬い民衆が慕う名君。
イタズラしたら……メッチャ、面白そう。
『あっはっは! 下衆いな! それで、どう仕掛ける?』
止めないのね。
知ってたけど。
そうだな。
上に立つ人間が優秀なら、ちょっとくらいはっちゃけても上手いこと処理してくれるだろう。
しかしあまり無難に乗り切られても困る。
多少は国の内側に注意を向けてもらわないと、時間稼ぎにならないし。
となれば。
……。
…。
夜。
現在地、中央区の中央。
の、ゼフィランサス殿下のいる城の中。
の、見張り塔の上。
ふむ。
パッと見た感じ、あの魔人族。
大勢に向かって指示をしているように見える。
あれが噂のゼフィランサス君かな?
『たぶんな……仕掛けるのか?』
いや。
こちらからは仕掛けない。
向こうに気付かせる。
ではステルス解除ッ! ……の、前に。
防御系の祝福効果をアクティベーションするざんす。
油断、ダメ。
攻撃は適当でいいや。
服装も変更。
前回、グローインドではサソリだったからな。
今回は……獅子でいくか。
獅子のイラスト入りの仮面。
では、今度こそ……ステルス解除ッ!
「やぁやぁお兄さん、いくらお月様がキレイだからってねぇ。こ~んなところに登っちゃダメでしょ?」
背後からとぼけたような男の声。
反応はえーなオイ。




