わくわく帝国潜入・その1
野を越え山越え谷越え……谷は無かったな。
河越えて関所越えて国境も越えて。
いざ踏みしめるは帝国領土!
現れたるは荘厳なる砦!
『ほぉ~ほぉほぉ~? 遠目で見ても、けっこう違うのぉ~? なんじゃろなぁ……スノールの境目にあった砦より、こっちのほうが豪華じゃな!』
たすかに。
こう、装飾とかが違う。
いかにも帝国って感じの威厳、あるな。
『それが砦の防御力に無関係っていうのが、また面白いのぅ。あの鳥のオブジェとか、目からビームくらい出れば』
そんな未来兵器アリのファンタジー砦とか……ちょっとやだなぁ。
『それで、これからどうするんじゃ? まさか本当に観光だけして帰るつもりじゃなかろ?』
まぁね。
とりあえず帝国に関する情報が欲しい。
それは国が傾くような重要機密とかじゃなく、一般的な知識レベルの話でいい。
まずは知るところから。
ファンタジーといえば帝国って表示は敵勢力の代名詞みたいなもんだけど。
さすがにそんな理由で、ねぇ?
先入観だけで物事を判断したらもったいない!
でもまぁ、砦には潜入しなくてもいいかぁ~?
うーん。
フィンブルム……つーかコルキュアス領でのんびり過ごしてる俺としては、戦争が起きるのは困る。
だから砦になにかしらイタズラするのはアリ。
けど。
うーん。
帝国の人たちだって、色んな事情を背負って生きてる。
それを考えると、ただ何も考えないでチートぶつけるのはこう……美しくない。
そう、美学。
やっぱりね、チート転生で異世界楽しむなら美学がないと。
まぁ、ただ好き勝手するだけだと飽きそうってだけなんだけど。
『そういえば、貪食の女神も最近なんか縛りプレイにハマっておったなぁ。あえて使いにくい武器で攻略するのが楽しいんじゃと。そういうことか?』
女神も縛りプレイでゲームすんのか……。
でもまぁ、そういうことですな。
と、いうわけで砦はスルー。
些細なイタズラのつもりでも、現場に生きる兵士たちにとってはシャレにならない可能性だってある。
皿1枚割っただけで、使用人の首が物理的に飛ぶ可能性もある。
……そんな心の狭いクズに最前線の砦任せるとは思えないけどさぁ。
さて、その先にある街は~?
街………。
おお………。
『おぉ………スゴいな。フィンブルムやグローインドの中央区並みにデカイのぉ。さすがにグローの王都には敵わんが』
でけぇ。
いや、まさか、ここが東の中央区?
いやいや、国境の砦のすぐ後ろに中央区もってくるか?
となれば、ここはなんちゃら領の東区になるけど……でけぇなオイ。
フフフ、これは期待できますよ?
さてさて、どんなふうに情報集めを楽しもうかな。




