がっつりとご休憩
娼館“蝶のそよ風”
バタフライエフェクト?
違うか。
規模としては控えめなほう、らしい。
まだ夕方にもなってない……どころか昼間だからね、お客さんは他にいないね。
もっとも、いくつかの店には俺のように連れだって入っていくのが見えたけど。
「最初から一泊するつもりのお客さんは早めに来る人も多いのさ。料金は変わらないからね」
今から明日の朝まで、部屋も人も使い放題、と。
そう言われると値段にも納得するしかないな。
もとより不満なんて持ってないけど。
さて、それではお楽しみ……あ。
「ん? どうしたんだい?」
……そう、だな。
娼婦なら、人の秘密をペラペラ話したりはしないよな?
「そりゃそうさ。そんな口の軽いヤツは色街で生きていけないさね」
ならいいか。
指輪に霊気を込めましてー。
どん!
「―――へ? トビラ?」
カチリと開ければぁ……はい、脱衣場、洗面台、そしてバスルームでございます!
「へ……? え、えぇッ!? 何? コレなんなの!?」
トビラの表を裏を行ったり来たり。
驚いてる。
そりゃそうだ、空間がおかしいことになってるんだから。
異世界を楽しむとしても、不便さを楽しむつもりはないのでね。
野宿とかしてらんないよ?
せっかくもらった生産系の女神チート、有効活用しますとも。
こちらの女性……ハウリアという名前だそうだが、なかなか度胸があるらしい。
シャワーにもすぐに慣れたし、シャンプー類も匂いを確かめてそのまま使ってる。
「あはッ♪ スゴいね、この香油! 泡が柔らかくて気持ちいいねぇ~♪」
香油っつーか、石鹸だけどな。
「へー。液体の石鹸かぁ。ワタシは初めて見たよ。お兄さん、お貴族サマって感じじゃないし……あ、術師サマだもんね。調合くらいお手の物かな?」
貴重な情報。
術師と、調合。
これからは手持ちの道具について聞かれたら、自分で調合で誤魔化せるか?
ふぅ。サッパリした。
ちなみにこの世界、入浴の文化そのものはあるらしい。
が、地域によるらしい。
寒い地域、水源が豊富な地域、あとは魔導水晶の流通が充分な地域。
ある程度条件がそろわないと風呂はないそうだ。
この辺りは入浴は月に数回、あとは水桶とタオルで、と。
「貴重な経験、感謝するよ。石鹸は髪も肌もいいカンジだし、お風呂は広くてのんびりできたし、このタオルも使い心地はサイコーだしさ! ホント、気持ち良かったよ!」
そりゃなにより。
「……だから、さ?」
うん?
「今度はアタシが、お兄さんをキモチよくしてあげるよ……タップリと、ね……?」
………。
……。
…。
プロの技、格が違ったぜ……。