のんびり旅模様・その1
この街でお金を工面できないなら。
別の街に行けばいいじゃない。
西方スノール領。
術師協会と揉めそうな俺だけど、なんとフィンブルム王国全体としては術師協会の影響力が強いのだ。
そんな中、スノール家は術師協会に対して他と対等な扱いをしているとのこと。
冷遇ではない。
冷遇ではないが……まぁ、チヤホヤしてくれるところに人が流れるのは仕方ないよね。
結果、西方では術師が足りてないのだとか。
銭を稼ぐにはもってこい! ……かもしれない。
俺?
普通に魔獣の素材を売るだけだから関係ないんじゃない?
パパッと行って戻ってもいいけれど、それじゃ不自然。
それに、楽しくない。
普通に移動することにしてみた。
コルキュアス中央区から街道を通って西区へ。
西区から野山を越えてスノール北区へ。
そこから街道を通って中央区へ。
……普通だな!
いや。
普通じゃない部分もあるけれど。
「デュランさん、あれがスノール北区ですよ! といっても、私たちも来るのは初めてなんですけどね。へへッ!」
街を指差してニパッと笑う犬娘。
クラスDランク1“ワイルドファング”のリーダーちゃん。
クラスCへの昇級試験という形の同行者なのだ。
西方スノール領に向かうとギルドで話したときに、お願いされたのだ。
クラスCからは護衛依頼が解禁されるので、その練習の意味合いもあるんだろうね。
もちろん他のパーティーも同行してる。
何かと縁のできたブレイドテール。
これは依頼の協力者。
護衛依頼は必ず複数のパーティーで行う決まりがある。
そして監督官は。
「ふむ。ここまでは問題ないですな。この調子が中央区まで続くのであれば、昇級は可能でしょう」
クラスAランク7ハンターのザグリアさん。
槍が得意なナイスミドル紳士。
ちなみにパーティーでなく個人でクラスAはかなりの実力者なのだとか。
で。
北区、なんつーか……鉄の街?
「自然系の……鉱脈ダンジョンが多い影響でしょうな。ゴーレムだけでなく、鉱石を含む魔獣素材が豊富に狩れるのです。鉱山の採掘と違い、頼まずともハンターたちがたくさん持ち帰るので、鍛冶の技術が発達した……と言われております」
紳士、博識。
俺的には気になるレベルではないが、あちこちから金属を叩く音が聞こえる。
なれないとうるさいだろうなぁ。
戦士系ハンターならワクワクする街かもしれない。
「デュランさん、宿の確保オッケーです! ……ただ、気になる話があって」
気になる話、ね。
いいじゃないですか。
俺はサブイベント肯定派なんだよね!




