こそこそと包囲……される前に
「え? あ、あの」
さて、用事は済んだしこれからどうしようか?
狩りに出掛けるのも微妙な時間だ。
だからといって娼館に行くのも……うーん。
「デュランさん、あの、術師協会に」
最近、蝶のそよ風以外の娼婦からもアプローチがあるんだよな。
ハウリアたちは俺のことを喋ってない。
が、やはり娼婦。
変化を察知する能力ハンパねぇわ。
「あの! ぜひとも術師協会にッ!」
どうも……何か、あると。
俺をマークしてる。
しかしこれも自業自得なんだよな……。
毎日娼館に入り浸ってるとか、どんなお大尽だよってな。
「デュランさん! お話をですねッ!」
話をする理由なくない?
「……え?」
サミルさんは俺を術師協会に引き入れたいんだろ?
「え、ええ。その知識と技術があれば術師協会の中でもすぐに上位に」
うん、お断り。
「な…ッ!? なぜですか!? それだけの実力がありながら……」
価値観が違い過ぎる。
「え?」
富や名声は俺にとっては無価値。
自由であること以上に欲しいものなんて無い。
「……そう、ですか。わかりました。この場は素直に引き下がるとしましょう。ですが、我々が貴方を欲していることは覚えておいてください。それでは」
なんてやり取りがあったのが昨日の話。
今朝、いつものように娼婦を隣に余韻に浸っていたところ。
「ようデュラン。相変わらずの色男ぶりだな」
そういうボルバンもどちらかといえばワイルド系のイケメンだが。
「俺はお前みたいな甲斐はねぇよ。それよりも、だ。術師協会が動いたぞ」
ほー。
早いな。
「……知ってた、って感じだな?」
テンプレだからねぇ。
あのサミルって人の雰囲気から、そこまでムチャするイメージはなかったけど、ね。
「ああ。今はまだ、な。やんわりと商人たちに圧力……の、ようなものをな。残念ながら北方領主のコルキュアス家は術師協会と繋がりが深い。街の住人の生活さえ脅かさないなら、大抵のことは見逃すだろうよ」
もちろん、術師協会もそれを承知。
なので権力を見せ付けても、その加減を間違うことはしない。
商店を使えないようにして、ジワジワゆっくり俺を追い詰める、と。
ふむ。
娼婦たちは大丈夫かな?
「アタシらは平気でしょ。術師協会はデュラン様を仲間にしたいんだろ? なら、寝床を奪うようなマネはしないさね。だって、それで出ていかれたらアホじゃん」
「俺もそう思う。向こうもお前が娼館のお得意様なのは知ってるはずだし。が、だからこそマズい。ギルドでの買い取りに干渉してきたら、ギルドはお前より術師協会を選ぶぜ? ハンターじゃないお前をかばう理由がないからな」
俺の現金収入は素材の買い取り。
そしてお金が無ければ娼婦を買えない。
今の生活……性活? を続けたければ仲間になれよ、か。
うん、なかなか悪くないな。
ターゲットを俺に絞り、余計な人たちに迷惑が行かないようにしてるのは好感が持てる。
「……へッ! 余裕しゃくしゃくだな?」
「ちょっと、まさか街を出ていくなんて寂しいこと言わないよね?」
まさか。
それに、このタイミングで出ていくのは面白くない。
「面白くない。くくくッ! お前らしい、と言っておくか。それで、どうするんだ?」
決まってる。
自由人の行動力を見せ付けてやろう。
……祝福の加護で現金増やせば解決しそうだけど。
それはガチでつまらないので却下だな!




