ゆるゆる素材回収……の前に異変解決
荒野の先にある湿地帯。
もっと足元がドロドロしてるイメージだったけども、そんなことはなかった。
苔がスゴい。
歩く度に足の裏がモッフモッフする。
どうなってんだろな、これ。
せっかくだし、ちょいとスキャンしてみるか。
ふむ、ふむー?
泥の層があって、水の層があって、その上を木々の根っこが隙間が無くなるくらい張り巡らされて、根っこの上にこの苔が。
へー、面白いな。
足の下、湖みたいになってるのかな?
「あの木だ。下の方にある枝を切り落として持ち帰るんだ。ある程度まで切っていくと、妖気のガードを纏うようになる。つまり、そこまでなら敵対することはない……はず、なんだが……」
「なんだか様子がおかしいですね。敵対……怒っている、という雰囲気でもありませんけれど……」
なんとなく、俺でもわかる。
空気がピリピリしてるような感じ。
これは鑑定しちゃうか?
いつもと様子が違うと、ハンターたちは警戒して近づけないし。
さてさて、木々の魔獣たちに何があった~?
えーと、水?
水の……底に?
ふんふん、水の底に沈んだ魔獣の残骸が……うぇ、腐ってるのか!
なるほど、それが原因で水が汚染されてんのか。
『ハンターたちの後始末が不充分じゃったかねぇ? まぁ金属とかと違うけんね、大地に還るからって考えてしもうたんじゃろなぁ。悪気はなかったろうがの』
うん、俺も知らなかったらやるわ。
「水が? ……そうか、たしかにそんなことを気にしたことはなかったな。腐った肉で濁った水か。それは魔獣だって調子が狂うだろう」
一応、それっぽい動きを見せてから伝えてみた。
どうやら心当たりがあるらしく、すんなりと信じてくれてなにより。
では早速、祝福の力で浄化を……。
………うん。
「んー? そりゃハンターだもの、依頼者のヒミツを言いふらしたりはしないけど……なになに? ナニするのさ~?」
なんとなく軽い感じするけど、職業倫理を信じよう。
信じてるぞ、という意思表示。
フードをとって素顔を見せる。
……魔獣、友好的? なんだよな?
……接触してみるか。
「あッ! おいッ!?」
沼トレント、ね。
枝が伸びてくる。
軽く巻き付いてくるけれど、締め付けることはない。
ってか、柔らかくて手触りもいいなコイツら。
なんだろうな、ゴツゴツした見た目なのにしっとりとしてて……。
おっと、感触を堪能するのは後だ後。
『詠唱を祝福するんが一番誤魔化しが効くじゃろね。術師もおるけぇ、術式の展開無しで浄化したんでは言い訳できん』
術式さえ使ってるように見せれば、俺のキャラ設定で押しきれる、か。
………。
へい、いっちょあがりッ!
って、うわぁッ!?
ちょ、おちつけお前ら!
一斉に枝を巻き付けてくるなよ! 普通に苦しいから!