のんびりと街歩き
街、到着。
門番がいる。
むしろ好都合。
魔導水晶を換金したいけれど、この街は初めてだと伝えた。
「中央通りをまっすぐ歩きゃハンターギルドがあるが……そうだな、ちょうどワシは今から休憩だ。案内してやろう!」
え? いいの?
俺としては助かるけど。
「なに! これも仕事のうちよ! ガハハハハッ!」
おー。
さすがはドワーフ。
豪快でイメージのままだわ。
あ、山人族っていうのね。
ふむ。
タブレット検索によると、どうやらこの世界での人間は種族では区別しないらしい。
色んな種族、まとめて人間か。
なんか逆にややこしい。
街は昼間ということもあってか、賑やかだ。
それもそうか。
設置されている時計を見れば、バッチリお昼時だし。
12時間半日、1日24時間周期か。
ありがてぇ。
こういうところが違ってると、気分的に大変そうだし。
メインストリートはかなり広め。
真ん中を馬車が通り、簡単な仕切り……花壇とか、植込みとか、そういうヤツ。の、外側を人が歩く。
そして。
ありました、武器屋と防具屋、それに道具屋なんかも。
く~、これぞファンタジー転生!
ま、俺は用事ないけど。
それよりは食事関係のほうがそそるねぇ。
「時間も時間だからな、店屋も屋台の連中も大忙しだろうよ。換金が終わったら見て回るとい。王城のある中央区に比べりゃ質は劣るが、安くて美味い店はたくさんあるからなッ!」
うむ、そそるねぇ!
歩くことしばし。
これは、いかにもギルドって感じのギルドだ。
受付は……あの若いエルフの兄ちゃんか。
とりあえず、素直に知らないことは知らないと宣言する。
「はい、ではご説明させていただきます!」
元気いいな?
あ、後ろで上司だか先輩だかっぽい人が心配そうに見てる。
新人さんか。
説明!
素材の買い取りに必要なのは買い取り証明のカード、もしくはハンターギルドのメンバーカード。
もちろん買い取り用の……売買カードを選ぶ。
なぜか。
転生者が冒険者になると、だいたい大事にしかならねぇからだ!
しかし問題がひとつ。
発行手数料が、ない。
「大丈夫ですよ。査定額からそのまま支払いが可能ですから」
あら、親切ね?
ほー、なるほど。よくある話。
「売買カードはメンバーカードに比べると紛失なさる方も多いので。どうしても、重要性というか……まぁ、特に他の効果を持たないカードですから」
ちょっとわかる。
俺もポイントカードとか雑に扱っちゃうタイプだから。
でもせっかくなんだし、ちゃんと管理しよ。
魔導水晶はいい値段で売れた。
食事もそうだが、このあたりの相場だと宿も困らないぐらい。
どっちも必要ないっちゃないけど……感じ感じ。
なんて歩いていたら……。
フニャッ。
「おにーさんッ♪ こんにちは♪」
突然女の子が腕に!
あ、犬耳。でも狼っぽい気もする。
「おにーさん今晩の宿は決まってるのかい? もしまだならウチの店においでよ。たっぷりサービスするから…さ?」
格好。
雰囲気。
台詞。
サービスするお宿……うん、そういう宿?
「そういう宿♪ どうだい?」
ふむ。
正直、そういうコトに期待してた部分はある。
富や名声はともかくね。だって男だもの。
問題は……手持ちなんだけど。
あ、それくらいのお値段?
全部込みで?
稼ぎの4割消えるな。
ま、いいか。
屋台飯はまた明日ってことでね!