ザクッと介入決定。からの・その2
国の未来のために。
革命のお決まりのセリフ。
その程度に考えていたけれど、どうやらかなり本気の様子。
エスタリアのキャパシティはいずれ限界を迎える。
それは紛れもない事実。
誰でも歓迎スタイルというヤツは、俺が想像している以上に需要があるらしい。
いわゆる、駆け込み寺みたいな。
だからこそ止めるワケにはいかないのだとレグルナルヴァは言う。
だからこそ、専守防衛のままのエスタリアを変える必要があるのだと。
いずれ限界が来るのはわかっている。
なのに限界が来てから慌てたのでは遅い。
それこそ、人々は軍に失望する。
ふむ。
もっと残念な感じを想像してたけど。
すっごいまとも。
それだけに街中で出会った連中の残念さが引き立ちますなぁ。
「この革命を、自分たちが国家を支配する権利を獲得するためのモノとしか認識していないの。きっと、私の言葉は半分も理解していないでしょうね。本当に莫迦しかいなくて困っちゃうわ。アナタもそう思うでしょ?」
口調。
初めて会ったときと同じになったな。
こっちが素かな?
「そうね。これから覇道を共に歩む相手にくらいは、常の自分を見せる程度の器量でなければ王は務まらないもの」
あえて砕けた姿を見せる。
たしかにそれも上に立つ人間の器が成せる―――まてまて。
共に歩む相手?
いったい誰のことを……うわぁお。
いい、笑顔です。
とってもニコニコした表情で俺を指差すお姫さま。
可愛い。
なんだ、なかなかお茶目なところもあるんじゃないか―――って、そうじゃなくて。
え? どゆこと?
「盲目的に私に従うだけの人間は、たしかに手駒としては優秀よ? でもね、それ以上の働きを期待できないの。思考放棄してるのと変わらないもの。頷くしか能の無い側近ばかり揃えてなんの意味があるのかしら?」
うーむ……?
どうやら姫さま、自分と対立できる人間を求めていらっしゃるご様子。
周囲が同調するばかりでは、自分を見失うリスクが高い……のだとか。
「私たちの……父も、そうでしたよ……真の忠臣は、必要なときに主君を諫めることができる者を言うのだ……と。もっとも、父の周囲にそういった人物がいたかは……わかりませんが……」
「国家の存続に関わる領土問題を蔑ろにしていた時点で期待できたものではないでしょう。現に私の周囲にも大勢いましたからね。変わらねば生き残れないというのに、変化を嫌いもっともらしい言葉で誤魔化しを進言してくる者たちが。……まぁ、その手の役立たずどもは手駒からまとめて追い出しましたが」
あー、ちょっとわかる。
日本にいたときの会社でもあったな。
新しい仕事を頑なに拒否る年配の人たち。
異世界でも同じか。
夢がない話だな~ホントに。
んで。
よりによって俺か。
ふむ? 重要なのは無意味な反発ではなく、目的を理解した上で問題点を臆することなく指摘できること。
いまの反乱軍……いや。
妹姫さま思いの外まともだったし、一応、革命軍と呼んでおくか。
いまの革命軍には総大将であるレグルナルヴァに意見できるほどの気概ある兵士はいない、と。
みんな気に入られるのに必死。
……ほー。
あのとき。
訓練兵団で独房送りのあと、リンチしてくれた先輩がたもその口と。
あれなぁ。
痛くはなかったけれど、やっぱりね、少しはこう……ね? 胸の内側にちょっと暴力的な感情もフツフツとね?
そうか……点数稼ぎのためだったかぁ……。
え?
革命が終わったあとに“処理”する予定?
いやぁ、さすがに物騒じゃないっすかね。
「必要でしょう。アナタを迎えるために、憂いを潰すのは。……さて、もう対話は充分でしょう? ―――私の隣に来いッ! デュラン・ダールッ! 私こそが世界で最も貴様を理解し、必要としているッ! 私が進むべき道を誤らぬために……我が覇道の成就のために……来いッ! デュラン・ダールッ!!」
……王、だなぁ。
堂々としてる。
なにを持ってして俺を理解していると言っているのかワカランけれど。
こう、揺るがない自信のようなもの、感じますねぇ!
この感覚が、いわゆる“カリスマ”ってヤツなんだろうか?
うむ。
やっぱりね~。
先入観とか、片方からの意見だけじゃわからないこと、あるんだよな。
理由はわからない。
けど確信できる。
レグルナルヴァの革命は、俺がイメージしていた悪役のようなソレとはまったく違う。
善悪でくっきり区別できるようなモノではないのだろう。
物語のように、勧善懲悪ってワケにはいかないんだね。
もっとも。
俺の答え、決まってるんだけどね。
―――断る。