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しれっと姉妹に任せてみたり・その2

 ゴーレムの相手は作業そのもの。


 黒雷を使ってガシガシ削るだけ。


 ただ。


 案の定、女神の加護の効果は鈍るな。


 術式を祝福して追尾効果を追加してみたけれど、イマイチ精度が物足りない。


 やはり女神の秘宝で産み出されたモノでも反発は発生するようだ。


 もっとも。


 組み上げるときに祝福の加護を利用したハズの“魔導の黒”そのものが影響を受けてる気配は無い。


 なるほど~。


 これは、使い方次第では反動をすり抜けることも充分に期待できそうだな。


 問題は、細かい条件を調べるのは難しそうってコトくらいかな。


 祝福タブレットの検索も万能ではないからね。


 うーむ……。


 ゴーレムが無限に出てくるこの状況、けっこう理想的な実験環境なんだろうれど。


 ちょっと危険がアブナイので却下。


 素直に真面目に戦おう。



 ◇◇◇



 チラチラ見た感じ。


 姉妹バトルは互角に見える……けど。



「―――くッ!? 相変わらず、動きは! 見事ですねッ!!」


「姉さんこそ! デスクワークが多いわりにッ! 訓練は怠ってない、ようですねッ!!」



 妹ちゃんのほうが余裕、ありますねぇ?


 天才的なモノ持ってる言ってたもんな。


 そもそも武器が違うもんな。


 エーテルウェポンと女神の秘宝じゃあ、やっぱり質がそもそも違うんだろう。


 ………。


 と、いうか。


 エーテルウェポンって、つまりなに?


 異世界だから。


 ファンタジーだから。


 そういうものって疑問すら思わなかったけれど。


 迷宮の奥地や強力な魔獣の中から見つかる特別な能力を持つ武器のことを―――魔獣の中?


 強化人間との戦いで味わったあの感覚、同じモノだと感じたんだっけな。


 魔獣に由来する武器ってこと……なら霊気を宿してるのはおかしいと思うんだよね。


 アイツら妖気だし。



「―――、―――。」



 うおっと。


 悪い悪い。お前らのこと無視したかったワケじゃないんだ、ゆるしてちょうだいな。


 はい、黒雷!


 よし。


 フッ……他愛もない。


 でもたぶん、手加減されてんだろうな。


 女神の秘宝で産み出されるゴーレムが、そのへんの迷宮でエンカウントするゴーレム程度の能力しかないとかありえないでしょう。


 探られてる?


 どの程度戦えるのかを試されてるとか、そういうパターンとかもあるかもしれない。


 まぁね。


 俺だって違和感あるんだもの、妹姫さまもなにかしら感覚的に祝福の加護に感づいてる可能性もあるでしょ。


 とはいえ。


 警戒してくれるなら、それそこかなりの好都合。


 こっちに注意を引き付けられるなら、リズの戦いも少しは楽になるだろうし。


 ………お?



「……ふぅ。さすがは姉さんですね。久し振りの手合わせですけれど、やはり有象無象とは緊張感が違います」


「……そういう、貴女も。帝国の武将と戦う機会も幾度とありましたが……これほど手こずったことはありませんでしたね……」



 お互いに距離を。


 そして始まる会話イベント。


 それはいい。


 しかし……うん、マズイな。


 リズがわずかに息切れ気味。


 エーテルウェポンに更なる変身が残ってるのなら希望はまだあるだろうけれど……どうかなぁ。



 しかし邪魔するタイミングも難しい。


 命は大切。


 けれど、リズにだって譲れないモノはあるワケでして。


 せめて彼女が納得できるくらいの状況までは待たないといけない……というか、待ちたいというか。


 アレですよ。


 俺には“戦士の誇り”なるモノは理解できないからね。


 理解できないならせめて、ギリギリまで。


 ほかに手段が無くなる瞬間まで。



「さて。少々、名残惜しくもありますが……姉さんだけに時間を使うワケにはいきません。私はこれから力を持つ者として、新生エスタリアの元首として、果たさなければならない義務があります」


「……暴力による世界の支配が義務ですか? 群衆の統率のために力を見せ付けることそのものは否定しませんけれど。しかし……それが長続きしなかったことは、歴史が証明しています」


「ならば私が最初のひとりになればいい。それだけのことですよ。まぁいいでしょう。そろそろ終わりにしましょうか? あぁ、最後にこれだけは言っておきましょうか」



 剣の、女神の秘宝の魔力が高まる。


 さてさて。なにをしてくるのか……おぅふ、冷や汗で背中が冷たいんだぜ!



「こうして敵対してしまったけれど、姉さんのことは嫌いではないですよ。いま、この瞬間も。尊敬する気持ちに変わりはありません。それでは―――さようなら」



「が―――ッ!? ゲフッ!?」



 ―――ッ!? 祝福結界ッ!!



 ……痛ぅッ! ……イヤな感覚だ。


 やっぱり祝福結界も、女神の秘宝の力の干渉あったか。


 だが我慢できないほど辛くはない。


 よし。


 しかしまぁ……そうきたか。


 体の内側から。


 エーテルウェポンの白銀の鎧を貫いて、リズのお腹から魔力の剣が一本。


 完全にグロ画像状態です。


 勘弁してほしい! よ!


 吐くぞ? いいのか? アァンッ!?


 ……おっといかん。


 瀕死の重傷なのはリズのほうなんだから、見てるだけの俺がメンタルブレイクしてる場合じゃねぇ。



 まずは回復の術式をガッツリ。


 これで結界を解除すると同時に治療される、ハズ。


 あとはこの剣を……どうする?


 引き抜く……しか、ないよなぁ……。


 このまま触れると結界の境界でバラバラにしちゃうから、解除と同時に即座にシュパッ! と。


 よし……よしッ!


 大丈夫だ! 俺ッ!


 回復の術式は機能している!


 リズは助かる……ハズッ!


 女神さまの力を信じろッ!!



『別に失敗しても甦生くらいワシの力で―――あー、はいはい。わかっちょるよ。おヌシの倫理観で生死を弄ぶマネができんのは承知しとるけぇ、安心せい。ホレ、さっさと済ませんかい』



 ア、ハイ。


 ―――いくぞッ!!

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