どっぷりバトル! 幻栄女王の宴・その4
ふと思った。
盗賊トカゲ、名前を付けたほうがいいんじゃなかろうか?
こんだけ頑張って走ってくれてるのに、名前が無いのはさすがにどうかと思うんだよ。
とうぜん、そんなマネすればますます道具としては使いにくくなるけれど。
もうね? 諦めよう!
俺、召喚系は向いてないな。
今後はなるべく増やさない方針で。
まぁ、名付けはあとの話よ。
いまはサクサクと国防軍本部、目刺しましょ。
◇◇◇
戦闘集団発見!
たが困った!
あたりまえだけど、どっちもエスタリアの装備だ。
ふーむ?
反乱軍はどっちかな。
………お?
「―――ッ!」
目が合った。
グリージニア教官……じゃないや、隊長殿。
おっけー。
―――魔導の黒よ、地面を駆けろッ!
「「あばばばばばッ!?」」
電撃ビリビリ~ってね!
もちろんダメージはゼロだし、しばらく休めば元通りになるので健康には問題なし。
ま。動けない間に取っ捕まって終わりだろうけれどね!
さて。
「―――軍本部だッ! 急げッ! マルライツァーのオッサンたちもそこに居るッ! それからリーフェルジルヴァ閣下はコッチ側だッ! 間違えんなよッ! 行けぇッ!!」
了解ッ!
空気詠み人、即ダッシュッ!
つまりコッチよりアッチがピンチ。
まぁあの人は俺より強いからね、この場は心配しなくてもたぶん大丈夫。
◇◇◇
……いやぁ。
幻想種が取り込んでたのとは別の、ちゃんとした……完全な形の女神の秘宝の気配。
これねぇ~。
イヤ~な気配に感じるのは。
『ワシの加護と互いに反応しておるのじゃろうな。あの女狐めがこちらの力を感じ取っているかまではワカランがな』
若干このまま逃げ出したい気持ちもフツフツと。
逃げないけどさ。
チートアイテムを手にした野心家の物語。それがハッピーエンドになることは、俺の知る限りほとんどないからね。
自称悪党の勘違い野郎が結局なんだかんだ慕われるギャグ展開なら別なんだろうけど。
ともかく。
ぶっちゃけ迷いも躊躇いもバリバリにあるけれど、コイツを放置するのは……俺の趣味に合わないからね。
………。
うん。
いろいろと自分に言い訳しても、怖いもんは怖い。
あと、イヤな気配もどんどん強くなる。
また反動でボロボロになる予感。
やだな~。
◇◇◇
で。
雑念マシマシで軍の本部あるとこまで来たんだけど。
状況、想像以上に悪し。
あれは……ゴーレム、なのか?
3メートルくらいの、この世界で見てきたゴーレムタイプよりは小型だけれど。
騎士……だなぁ。
『ふむ。どうやらアレなぁ、女神の秘宝の力で産み出されたようじゃね。生産、統率、支配、それらと複合した戦闘系の加護を持つ女神の力……かのぉ~』
ふむ。
言葉の響きからして、軍隊の偉い人にはバッチリ適合しちゃう系統のSSR武器なのは理解した。
個人的には少しだけありがたい。
人間相手だと、どうしても手加減が必要だからな。
細かい配慮をしなくてもいいだけ、ゴーレム使ってくるのは助かるんだよね!
んじゃ、最前線に行こうかね?
突っ切る……いや、跳べるか?
「―――、―――ッ!」
頼もしいなぁお前は。
いくぜぇ、特大ジャンプッ!
からの~ッ!
術式“降り注ぐ黒雷の大槍”ッ!!
フハハハハ。
見事な騎士のゴーレムだったが……クックック、見たまえ、まるでゴミのようだ。
そして鮮やかに着地ッ! ―――ウボフッ。
衝撃でおケツが痛い……ッ!
胃腸が激しく揺らされた気分……いや、物理的に揺れてんだろうけど。
絶対あとで改善しなきゃアカンわコレ。
下手したら吐くぞ?
っと、俺の内々の事情はどうでもええねん。
「デュ―――ッ! ……んんッ、フェイス・コードかッ! 良いタイミングで来たものだなッ! ヴェンティ閣下の依頼は……ほぅ、どうやらストディウムも複雑なことになっているようだな。まぁいい、せっかく立ち寄ったのだ、グラナーダに向かう前に少し遊んでいけ」
ふむ。
少将閣下直々のお誘いとあらば、小官如きがお断りするワケには参りませんなぁ!
なんてね。
状況はお世辞にも有利とは言えないっぽい。
さて、どんなふうに暴れようかな?




