どっぷりバトル! 幻栄女王の宴・その3
革命派の言い分。
基本、エスタリアは誰でも歓迎のスタイル。
それはいい。
が、現実問題として土地が足りなくなる可能性がある。
なるほど、そりゃそうだ。
人間だもの、食うもの寝るとこ住むところは必要になるもんな。
だから、限界が来るまえになんとかしよう。
それで戦争やろうって話か。
領土、広げようって。
ふーん。
まぁ、国の未来を~ってのはウソではないワケだわな。
考え方は理屈ではある。
だからこそ。
なら、なぜそれを人々に説明しないのさ?
説得する材料としては充分。
わざわざこんな力任せの方法をとらなくても、市民の支持があれば別に―――
「貴様はなにを言っている。なぜ我々が軍事行動について一般人などに了解を得ねばならんのだ」
はい?
「エスタリアは軍が統率する国。ならば、軍事行動を支えるのは国民として当然の義務だろうが!」
いやいや。
軍を支えるのはたしかに国民だけどさ。
そういうことじゃないでしょ。
そんな、なんの説明もしないで財産を取り上げたら略奪と一緒でしょ。
お前たちのやってることは独裁者のそれと変わらないよ。
「ふん。たかが3等武官程度には大義ある戦いなど理解できんのも仕方がないか。貴様と問答するだけ時間のムダだろう。まぁいい。せめてもの情けだ、命くらいは助けてやる。そこをどけ!」
もちろん断る。
市民のみなさんには借りがあるからな。
訓練兵団として生活している間の衣食住。
いま着ている制服もそう。
あとはお給料もね。
全部、市民からの税金で賄われている。
つまり。
俺にはこの人たちの生活と安全を守らなきゃならない義務があるのだよ。
だからこの場を明け渡すワケにはいかないのだよ。
「莫迦めが。軍属でありながら平民に媚びるような恥知らずなことを口にするとは。いいだろう、義挙と反乱の区別もできんような愚図など生かしておいたところで無意味だろうからな。―――総員、抜剣ッ!!」
おお!
一糸乱れぬ動きって、こういうのを言うんだろうな。
一斉に剣を抜くのはちょっとカッコいい。
こんな状況じゃなきゃ、もっと素直に感動できたんだろうね。
「貴様にしろこの場の民衆にしろ、己の立場も弁えずに我ら義勇軍に向かって吠えるなど、家畜にすら劣る所業よ! そのような愚図どもなど、どのみち新生エスタリアには不要ッ! この場で全員、処分してくれるわッ!!」
あちゃー。
処分ですってよ。
これはアウトでよろしいでしょう。
これでは俺が戦わないと、市民のみなさんがR15指定にされてしまう。
うんうん。
仕方ないよね?
ふひひ。
と、いうワケで。
ハッタリ式陣、展開ッ!
今回のイメージは雷系でいこう。
派手にブッ飛ばしてスッキリと。
もちろん致命傷は与えない。
装備破壊と激痛だけ。
いつかの鵺の糸と同じだね。
漆黒の雷が辺りを凪ぎ払い天に昇るように……と、まぁ色んな妄想というか願望を込めた結果。
式陣、だいぶ意味不明なことになってるんだけど。
ハッタリとしての効果はバッチリかな。
しかし、なんつーか。
完全に趣味で構築してたヤツ、まさかこんな形でお披露目することになるとはね~。
人生。わかんないもんだ。
さて。
覚悟はよろしいかな?
よろしくなくても使うけど。
術式“魔導の黒”
―――名前はまだ考えていないッ!!
「「~~~~~~ッ!!??」」
たーまやー。
吹き飛ぶ兵士。
砕ける武器防具。
声も出ないで悶える姿。
うーん。
実に気分爽快! まさに。
『まさに外道?』
失礼な。
これもみな、市民の生命と財産を守るための致し方ない犠牲。
いわゆる、コラテラル・ダメージであります!
◇◇◇
「盗賊トカゲに騎乗、そして顔にコード。どうやらアンタが噂の依頼人で正解みたいだねぇ? 話は聞いてるよ、みんなのこと守ってくれってさ。しかし……私らの出番はなさそうだね、こりゃ」
感覚のみとはいえ激痛。
そのせいで動けなくなった兵士たちをどうしようかと悩んでいる間にハンター到着。
どうやら街の入り口で助けを頼んだハンターたち、ほかの仲間にも知らせてくれたらしい。
いやいや、出番がないなんてそんなこと。
追い詰められたアホはろくでもないことをするって、昔から決まってるからな。
ハンターたちにはむしろ、これから苦労をかけることになると思うよ。
「そうなのかい? パッとみたところ、反乱軍……の、連中のが優勢に見えたけど。だから私たちも迂闊に動けなかったんだし」
でぇじょうぶだ。
いまからガッツリとブッ叩くから。
そういうことなんで。
悪いけれど、みんなのことお願いしていいかな?
俺ひとりはもちろん。
軍だけの力では事態は解決しないだろうから。
もちろん女神の秘宝についてはナイショ。
引き受けてくれる? ホント?
助かる~☆
よし。
じゃ、この場の後始末は。
「はい、ハンターさんと私どもにお任せください。事が済んだらぜひ、皆の商店をお訪ねくださいませ。どうか軍人さん、ご武運を!」




