どっぷりバトル! 幻栄女王の宴・その2
戦いの気配は強く感じる。
けれども未だ、エンカウントなし。
さっきの?
アレは挨拶みたいなもんだし。
どうやら、街の全域が戦場になってるワケではないらしい。
ひと安心、でいいのかな?
革命。
あんまりさ、いいイメージがないんだよね。
決まり文句の、必要な犠牲って言葉がどうもね。
言ってること全部を否定はしないけどさ。
100人の幸せのために、ひとりを犠牲にするってさ、効率的だって話。
でも。
自分がそのひとりに選ばれたら?
納得できるだろうか?
そんなの、ムリに決まってる。
例えば、ひとりの悪党が意図して悪意をばらまいたせいで。
それで大勢が迷惑を、だから責任を取れ……っていう話とは全然別物だからね。
生け贄と同じだよ。
もちろん、ほかに方法がないから仕方なくってパターンもあるだろうけれど……。
難しいよね。
まぁ。
少なくとも今回の革命、もとい反乱は私利私欲だろうから遠慮なくブッ飛ばしちゃるけんね~。
事実関係の確認?
ハハハ。
歴史を書くのはいつだって勝者なのだよ?
死人に口無し。
いや、そこまではやらないけどさ。
◇◇◇
たとえばこんなシチュエーション。
軍人と民間人。
お店から品物を持ち出す軍人。
膝を付いて頭を下げる商人。
武器を人々に突き付ける軍人。
ケガをして倒れる町人。
これ。
俺の想像通りのことが起きてると思うんだけど……さて、どうだ?
「だから何度も説明しているだろう? 軍事行動のための一時的な徴発に過ぎん。事が済み次第、順次補填するから心配などいらん」
ふむ。
聞こえてくる説明はマトモ。
これで顔がニヤニヤしてなければ説得力もあったのに。
「し、しかし! 事前になんにも説明も無しに、それもこんな急に根こそぎ持っていかれたら! 私どもの生活が―――ひぃッ!?」
「これこれ、キサマ。もしかして忘れているのか? そのキサマらの生活とやらを守ってやっているのは誰なのか、忘れているのかな?」
「で、ですが……いえッ! 納得できませんッ! こんな野盗紛いのような、そんなものを納得などできませんッ!!」
「野盗……だとぉッ!? キサマぁッ!!」
「―――ッ!!」
術式“蝕む氷結の大矢”
「無礼者がぁッ!! 覚悟は―――ぴぎゃぁッ!? 足、がぁ……ワシの足ぃぃいぎゃぁッ!?」
「―――へ?」
商人さん、見事な啖呵だったよ。
武器を突き付けられてもあれだけ言えるのは尊敬しちゃうね。
俺には絶対ムリだ。
命が惜しいからな。
さて。
おはようございます、反乱軍のみなさん。
朝から略奪行為とはなんともまぁ、賊軍にしてはずいぶんと勤勉じゃあないですか?
「な―――ッ!? 反乱軍だとぉッ!!」
「国家の未来のために立ち上がった我々を賊軍呼ばわりするなどとッ!!」
いや、賊軍でしょうよ。
エスタリア国防軍の制服と装備を身に付けているにも関わらず。
エスタリアの国民から暴力で財産を奪おうってんだものよ。
どんな理由を掲げたところで、お前たちが略奪者である事実は変わらないでしょうに。
「ふん、貴様のような俗物にはわかるまい。物事は大局的に見ねばならんのだ! 国土を広げ、充分な生産力を確保するためにも、いまは軍備を優先すべきときなのだ!」