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チリチリ焼き付く戦いの匂い・その2

『戦争はイヤだとあれほど口にしていたではないか。内戦も立派な戦争の形じゃ。身内同士の勢力争いという、ある意味もっとも愚かな戦争のな』



 それは……まぁ……。



『ワシとて人間の戦のイロハは詳しくないが……革命などというものは昨日今日の思い付きで実行できるようなモノではあるまい? ならば、この戦いの原因はこの世界の、この国の人間の不手際でしかあるまい。おヌシがそこまで世話をしてやる理由はなかろう?』



 そう言われると。


 たしかに、この戦いはガッツリと国の運営というか……政治とか? そういうかなり踏み込んだ戦いだ。


 どんな結末になったとしても。


 参加してしまった時点でこう……なにか、手遅れな雰囲気がビンビンしてくる。


 そもそも。


 俺が狙われてるワケでもないし。


 果たすべき責任はあるけれど、それならまずはグラナーダへ向かうのが筋だろうし。



『仮にこの革命で大勢の命が失われたとしよう。だがそれについておヌシが背負うべき責任など皆無じゃ。本来ならば存在しない、イレギュラーに頼らねば生き残れぬのなら、それはもとより滅びる定めと変わらん』



 女神さま、手厳しい。


 でも、言ってることも少しくらいはわかる。


 世界を見守る女神すら防げないようなイレギュラーらしいからな、俺の存在。


 しかし。


 それを言ったら氷の幻想は?



『ありゃおヌシが発掘したようなモンじゃけぇ、ノーカウントじゃ、ノーカウント。遺跡に遊びに行った結果の話でもあるからな。……まぁ。それだってなぁ、あの魔導院なる組織の術師どもが余計を働いたせいじゃったからのぉ~』



 うーむ。


 まさかこんなタイミングで悩むことになるとは。


 純粋な、人間同士の戦い。


 そこに割り込む。


 いざ、こうして目の前にしてみると……難しいなぁ。


 予定と違うもんなぁ。


 受けた依頼を果たしたら、あとはお任せするつもりだったし。



 そしてもうひとつ。


 そもそもの問題。


 俺は結局さ、革命派のことをなにも知らないんだよなぁ。


 イメージだけで、聞いた話だけで。


 それでなんとなく悪党っぽいかなと判断していただけなんだよなぁ。


 と。


 いまから戦うかもってときに、それも女神さまにブレーキかけられてからようやく考えるってのがまた。


 うーむ。



『そうじゃな。この際だからハッキリと言っておこうか。たとえおヌシがどれだけこの世界の人間を見殺しにしたとしても、ワシはおヌシの行動全てを肯定しよう。ワシがおヌシに祝福の加護を与えたのは……ふむ、おヌシの言い方を真似るのであれば、それがワシなりの“命に対する責任”というヤツじゃ。イレギュラーを防ぐことができなかった、な。わかるか? その力は別に、おヌシに世界を護ってもらうために与えたモノではない』



 なんというか。


 意外に苛烈というか。


 なかなか人間には難しい価値観をしていらっしゃるご様子。


 まぁね、女神さまだもんね。


 考え方は違うよね。


 けど。


 そうなると、だ。


 アレかい?


 それはもう、欲望のおもむくままに力を使いまくっても女神さま的にはオッケーってこと?



『それを望むのであれば。なんなら、いまから世界征服でも目指すか? 地位、武力、権力、財力、あとはハーレムか? どれも定番じゃねぇ~』



 ニヤニヤする女神さま。


 またまた~、わかってるクセにぃ~。


 そんな最高にクッソ面倒なこと、この俺がやるわけないでしょうに。


 ふむ。


 自分の心に素直に従うとするなら。


 そう、だな……。


 革命派が世間一般の常識に照らし合わせて、いわゆる“悪”と呼ばれる存在かどうかはわからない。


 わからないが、ひとつ。確かなことがある。



 ケンカ、売られたよね。俺。



 復讐、なんて強い言葉を使うほど恨んではいないけれども。


 あまり愉快ではない歓迎をされちゃってるワケでして。


 私物もパクられたし。


 しかも。


 それでいて、俺を仲間に加えようと……いや、たぶんだけど。仲間というよりは手下にしてやる、ぐらいの感覚かもしれん。


 まぁ……正直、面白くはないよ。


 だから。


 こういうこと言うとさ、なんとも器の小さい、心の狭い男だと思われるだろうけどさ。



 革命派の連中、慌てるの見たいよね。



 それから、革命派を率いているだろうお姫さま、レグルナルヴァのお嬢さん。


 女神の秘宝を片手に、いまごろは自分の勝利を確信しているころだろうけれど。



 お姫さま、ギャフンと言わせたいよね。



 うん。


 心に正直になったら、むしろ戦う理由が見つかってしまったでござる。


 逃げられなかったよ。


 残念!



 どのみち女神の秘宝を放置するのは危険だべ。


 戦争賛成な連中の手元に置いておいたら、間違いなく戦火が広がるだろうし。


 ほかのことはともかく、コレに関しては俺が始末しないといけない……女神チート案件でしょう。


 たぶん。


 いや、案外現地のみなさんでも解決できるかもしれんけどさ。


 所有者である姫君、普通の人間だし。


 ……人間だよな?


 実は強化人間でしたとかマジで止めてほしいんだけれど。



 ともかく。


 売られたケンカ、買っちゃいましょう!


 鼻っ柱、へし折って笑っちゃるわ。


 うんうん。


 なんだか楽しくなってきたぞ。


 やっぱりさ、俺はこれぐらいの俗物根性で戦うほうがいい塩梅だと思うのですよ。


 大義名分をひっさげた正義の味方、どう考えても俺のキャラクターじゃないもん。


 ヴェンティ閣下からの依頼?


 もちろん果たすよ。


 この場での用事が済んだらね!



 クックック……。


 姫閣下、きっと油断してるに違いない。


 巨大な力を手にしたことで、調子にのってるハズ。


 残念だったな。


 もっと理不尽な力を手にしたことで、しょ~もないほど調子にのったヤツがそっちに向かっちゃうんだぜ。


 フハハハハ。


 とうとう本格的無双デビューかな。


 姿を眩ます方法も考えないとだね。



『そもそも、まずは女神の秘宝を如何にして黙らせるかという問題もあるけぇ。真っ向勝負は危険じゃぞ? 色んな意味でな』


 わぁお。

いまさら主人公に対して“正義と道徳と慈悲を兼ね備え一本筋の通った漢気溢れる正々堂々とした思慮深い英雄”みたいなイメージを期待していらっしゃる方はいないだろう……とは思いますが念のため。


本作の主人公、こんな感じです。

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