びっくりバトル! 人造妖魔・その1
蛇。
そして女の人。
ふーむ?
目が合っただけで身体を石にされたりはしないんだな。
「えッ? ナニそれ怖ッ。え、なに、どういう流れのハナシなの?」
おや。
メデューサをご存じない?
目が合ったとたん石にされてみたり。
なんなら、視界に入ったと同時に石にしてきたり。
あとはなんだべ?
精神を壊しにきたり。
頭から生えたヘビが炎やら雷やら吐き出して―――
「ちょ! ちょっとストップ! え、なに? そのズルすぎるバケモノはさぁ! いやいやいや、見られただけで石にされちゃうとか、反則とかそ~ゆ~レベルじゃないでしょッ!?」
………。
言われてみると。
メデューサすげぇわ。
ちょっと感覚、マヒしてたかも。
だってなぁ。
場合によっては、切り落とした首が浮遊して襲ってきたりとかもするし。
多芸だからね。石にしてくる程度ではもう驚かないよ。
なんだか新鮮な反応。
ま、メデューサのことはもういいや。
とりあえず、雑談のおかげで少しは落ち着けた。
よし。
祝福効果を変更。
対象、霊気の鎖。
効果、迎撃。
範囲、向かってくる攻撃全て。
この条件で―――踏み込むッ!
「―――ッ! やる、ねぇッ!! そうこなくっちゃッ!!」
当然、反撃される。
が、もちろん反撃も立派な攻撃。
祝福が施された鎖はしっかり反応。
この状況。
たぶん、第3者から見れば、激しい攻防に見えている……かもしれない。
もちろん実際は違う。
俺、ちょっと焦ってる。
ステルスが見破られて。
霊気を奪うのにも失敗して。
これで手札は2枚消えた。
それも、女神の加護という最強の山札から引いたカードが。
まぁね。
そこは条件を組み直せばいいんだろうけどさ。
問題は、頭がソッチに引っ張られてること。
失敗したことそのものが気になってしょうがない。
アレです。
お出かけした先で、急にガスの元栓とか戸締まりとかが気になると止まらなくなるダメなヤツ。
チートで強がっても根っこはヘタレ。
それでも、今回はオートガードが100パー機能してるだけマシかな。
しかし。
俺だけ焦るのは不公平だよな?
考えようでは、ちょうどいいのかもしれない。
とりあえずほかに何も思いつかないし、コイツで試すとしよう。
掴み攻撃対策。
人間相手に試すのは初めてだけれど。
強化人間、きっと頑丈。
多少加減を間違えたとしても、簡単には倒せないだろうから好都合。
細かい手加減はたぶん、できない。
女神の加護を組み込んでない、無い知恵から捻り出した術式だからね。
セーフティーもリミッターも無いからね。
……そもそも通用するかもワカランけれど。
「んふ~♪ キミ、ホントに強いねぇ。これならもっと甘えちゃっても―――いいよねぇッ!!」
うひゃ~。
三編み増えた!
でもたぶん。
―――来たな、本命ッ!
1本だけ妖気が強いッ!
槍のように真っ直ぐ向かってくる。
けれど残念、その攻撃を待っていたいたんだな~コレが!
キャッチ、からのッ!
術式“侵蝕する灼紅の猛毒”ッ!
「―――ッ!? っとぉッ!?」
惜しい。
本体まであと1メートルくらい。
自由に動かせるだけあって、切断もできるらしい。
使ったのは炎と毒の属性を複合させたオリジナルの霊術。
相手の内側から、今回は三編みの内側へ流し込んでこんがりトロトロにしてやる……予定だったんだけどね。
RPGのスキルっぽく表現するなら“触れると毒・火傷”みたいな感覚だろうか。
結局対応されちゃったけど。
まぁ、悪くないか?
「むむ~。髪は女の子にとって大切なモノなんだよ? もっと優しく扱ってほしいな~」
悪いね。
その手の女性への気づかいは、売り切れ御免の仕入れ未定なんでね。
女は殴らないとか。
女性を傷付けたくないとか。
美女になら殺されてもいいとか。
そういうのは、俺は遠慮させてもらう方向なもんで。
考え方は人それぞれだし、そういう主義はどうぞご自由にって否定はしないけれどさ。
それはそれを実行できるだけの実力者だから許されるようなもんでしょ。
俺? ムリムリ。
もっと女神の加護を使いこなせるようになったら……なったら……うーん……それでもちょっと違うか。
俺の手加減は、命に責任を持つことから逃げるためのモノだからな。
目的がそもそも違うもんな。
しかし。
ますます困った。
できれば避けたいぶっつけ本番。
それでもほかに手段が思い付かなくて。
どうせ失敗してもリスク少なめだからと。
半信半疑で試してみたのに。
ホント……なんで俺の術式は通用しちゃったんだべなぁ?




