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とりあえずは情報回収

「合成魔獣の研究は順調です。魔導水晶の拒否反応も問題ありません。強いて言うならば、定着率に改良の余地がありますね」


「ふむ。運用については?」


「現段階では思い通りに動かすのは難しいでしょう。敵地に放って暴れさせるのが1番効果的ですかね」


「なるほど。ひとまず実戦に持ち出せるレベルではあるワケだな」


「しかし気を付けなければなるまい。自陣で解き放とうものなら目も当てられん」


「兵士としてではなく、罠として使うほうが楽そうですわね」


「それで、コストのほうは?」


「そうですね、やはり魔獣を生きたまま確保するのに―――」



 ◇◇◇



 ……うーむ。


 思っていたのと少し違うな。


 合成魔獣。


 色んな魔獣をマゼマゼしたキメラたち。


 まぁね。


 人間素材のグロテスク物件が存在しなかったのは、個人的には大歓迎なんだけれど。


 強化人間計画とは別?


 キナ臭いのは変わらんけれど。



 ◇◇◇



「それで、取引のほうは順調かね?」


「4国同盟はフィンブルムが筆頭となって、それからエスタリアは国家元首の次女を中心に。ブルム帝国の包囲は順調と言えるかと。問題は北のルジャナですが……」


「あの国に教えるのは反対意見が大多数ですからね。ブルムを片付けた後に、我々が世界を手中に収めるさいに邪魔になりますから」


「これこれ、言葉には気を付けなければならんよ。あくまで我々は世界に平和と秩序をもたらすべく上に立たねばならん、ただそれだけのことだ」


「おっと、これは失礼」



 ◇◇◇



 急に小悪党感、出てきたな。


 世界征服ねぇ。


 とりあえず、話しぶりからしてエスタリアは完全に利用されてるだけっぽいな。


 と、いうかナメられてるかな。


 大まかな話。


 キメラを戦力にブルム帝国の打倒。


 それを各国に打診。


 連合組んで勝利したら……最後のイイトコをかっさらう。


 こんな感じか。



 ◇◇◇



「セカンダリの連中には気取られておらんな?」


「問題ありません。私が直接セカンダリエリアの様子を探りに行っておりますが、不審な動きはございません」


「ほう。確かかね?」


「はい。仮になにかしらのトラブルが発生しても対処は可能でしょう。日頃から模範的教師として、セカンダリの人間たちから信用を得ていますからね」


「さすがは名門ワーグニー家の次期当主といったところだな。下級国民相手にも分け隔てなく接する器は見事だ」


「恐縮です。フフフ………」



 ◇◇◇



 ………。


 信用、されてないんだなコレが。


 しかし、それはそれ。


 セカンダリの人たち、プライマリに対して不満はたしかにある。


 が。


 さすがに合成魔獣までは。


 なにか金のかかる研究を、というのは知られてるワケだけどさ。


 そういう意味では、“アイツらなにかやってんな”と思われるところまでは想定内なのかもしれんけど。


 まぁね?


 ここにいる連中も、こんだけ露骨にイロイロやっておいて。


 さすがに、疑われてさえいない……なんてご都合展開、思ってないだろう。


 ………思ってないよな?


 だとしたら、ちょっと残念なイメージになっちゃうぞ。



 ◇◇◇



 はい。


 一通り情報集めたので撤収なう。


 しかしまぁ……思ってたのと違うな。


 強化人間ではなく合成魔獣。


 しばらく聞き耳立ててたけれど、人間と混ぜようかみたいな話題はまったく出てこなかった。


 それならそれでいいんだけど。


 あとは、帝国包囲網か。


 近隣諸国と強力してブルム帝国へ対抗するという話。


 それも結局ストディウムの野望マシマシの計画みたいだけれど。


 ふーむ。


 なかなか複雑。


 というか、おおごと。


 2国の間だけの仲好しこよしの悪巧みかと思いきや。


 一心不乱の大戦争が始まりかねんね。


 どげんしましょ?


 まぁ。


 どうするもこうするも、まずはヴェンティ閣下に報告に戻るんだけどさ。


 本音を言えば。


 そりゃもう、さっさとナイフ取り返してオサラバしたいけれどさ。


 いま、このタイミングで実行したらどうなるか?


 間違いなく事態がさらにややこしくなるだろう。


 なるべくなら、現場が混乱しないうちに情報を持ち帰りたい。


 ヴェンティ閣下、明らかに知将。


 なら、俺よりもよっぽど巧い解決方法を考えてくれるだろうねって……まぁ。


 はい。


 責任、押し付ける気マンマンです。


 みんなで解決しよ?


 世界の問題だもの。


 もちろん、俺だっていまはこの世界を生きる人間のひとりですから。


 協力は惜しまな……くもない。


 旅人としての自由を失わない範囲でなら喜んで協力しましょ。


 日本への未練とは別にね。


 ここが俺の生きる世界だからね。



 ◇◇◇



 さて。


 のんびり地下トンネルを歩いているワケなのですけれど。


 ……いる。


 いるなぁ。


 外、待ち伏せがいる。


 どのタイミングでバレた?


 少なくとも宿屋を出るときにはステルスを起動していたのに。


 ステルスが効かない?


 条件指定が甘かったのか?


 ふーむ。


 魔力探知の範囲、絞ったのが見事に仇になってるな。


 でも、こうして察知できるということは、少なくとも祝福の加護を超えるような力は持っていない。


 祝福の力を歪めるような、幻想種でもない。


 ん?


 違うわ。


 ラービーナに祝福耐性があったのは女神の秘宝の力だったっけ。


 とにかく、そういうレジェンドなSSレア武器とかは持ってないワケだね。


 んー……。


 出る、か。


 ステルスが通用していないなら、別の出口を作っても追跡される可能性もあるし。


 そして、そんなヤツに祝福空間の存在を見せるワケにもいかない。


 見てすぐには理解できないかもしれんけど。


 推察される可能性。


 危険だね。


 それならいっそ、ここから素直に出たほうがまだ。



 さて。


 防御系の祝福をアクティブにして。


 よし。


 出入り口、普通に土の術式で崩して……と。


 あとはどうするかな。


 出た瞬間を狙われる可能性、特大。


 とりあえず……仮面で顔を隠しとくか。

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