サクッと挨拶、学院案内・その3
案内人はサミルニールからリグリットへ。
同じ臨時教員でも仕事量が違うらしい。
サミルニールは他の仕事をしていないので、ほぼ正規教員と同じ。
書類仕事も多いそうな。
いまごろ、ペーパーテストの採点中。
ハンター兼業のリグリットは実技メイン。
わりと空き時間多め。
もちろん、学生から声をかけられれば指導に入る。
「っても、今日は午前中でだいたい終わってるけどね。それに、デュラン先生にさんざん投げ飛ばされたからな。いまごろは皆で相談してるんじゃないかな~? あの先生、一泡吹かせてやろうぜ! ってさ」
うへぇ。
こりゃ、次の手合わせは大変なことになりそうだ。
活気があるのはいいことだけどね。
「ま……プライマリとのゴタゴタはあるけどさ。学生たちはなんだかんだタフなのが多いよ。自分たちでイロイロ考えて、お互いに切磋琢磨ってヤツを。そんな姿を見てるからこそ、セカンダリに残った教師たちも気合い入るってもんさ」
ふーむ。
そもそも。
なしてまた対立してんのかね?
貴族と平民。
なんだかんだ上手に住み分けしながら勉強してたんだろうに。
「ん~、アタシも詳しいことは知らないけど。数年前から急に露骨になった感じかな。あとは……これは裏取りしてない話なんだけど。前にプライマリの臨時やってたハンターから聞いたんだけどさ」
ふむ?
なにやらプライマリエリアで、職員たちを中心に新しい研究を始めたと。
しかし、その研究は金食い虫。
資金を集めるためにどうするか?
結論、貴族から搾り取ろう。
そのためには……貴族出身の学生をとことん優遇して持ち上げてしまえばいい。
そうすれば喜んで金を出すだろう。
なるほど。
流れは理解した。
しかし、そんなのがまかり通るとは。
「もともと学院の権限が大きいから……で、は、ちょっとな……いくらなんでもやり過ぎだよ。アンタも気をつけなよ? 地味~な嫌がらせとか、そういうのもあるからね。まったく、ホントなに考えてんだか」
コイツは当たりかな?
よくあるパターン。
もちろん決めつけはよくないけど。
プライマリエリアに怪しいのがある、それがわかっただけでも調べるのは楽になる。
で。
それはそれ。
◇◇◇
「ここが図書館だな。小難しい歴史や軍事関係から子ども向けのおとぎ話まで、とにかく集められる物は集めましたって感じかな。中立国らしく、色んな国からも本が集まってるらしいね」
ほほー。
これはこれは。
いいね。
旅の術師という設定によりリアリティーを持たせるためにも、本の知識は必要だろう。
ものっそい今さらだけど。
いままでは旅人設定にそこまで興味を持たれなかったから、油断してたもんな。
立場が違えば考え方も違う。
学生だもんな。
しかも、セカンダリの学生はプライマリの横暴のせいで、かえって意欲に燃えてるっぽいし。
うむ。
ストディウムを離れたあとのことも考えると、この図書館はぜひとも利用したいところ。
「とりあえずはこんなところかな。生産系の学科はアタシもあんまり詳しくないからさ。テキトーな説明しちゃうのもアレだし、自分で歩いたほうがいいんじゃないかな」
オッケーです。ありがとね。
さて。
このまま学院の中をウロウロしてもいいのだけど。
1度、落ち着いて考えたいな。
図書館に戻って……いや。
宿に戻るか。
いま、このタイミングで学生に声かけられても困っちゃうからね。