本物を知った日
夕方まであと少しという時間、ハンターギルドのカウンターには6人の受験者の姿があった。
「……はい。確かに規定数ありますね。おめでとうございます。それではメンバーカードを発行しますね」
ギルドで特殊な加工を施したカードを受け取る若きハンターたち。
名前を記入して霊気を通すことで登録が完了する。
念願のハンターの第一歩。
クラスE、ランク20からの、正真正銘の第一歩である。
「ねぇ、アレは?」
「え? あ、そうだ! 忘れるところだった! あの、もうひとつ見てほしい魔導水晶があるんですけど」
「……もうひとつ。なんでしょうか?」
「実は、かくかくしかじかで」
「まるまるうしうし、と。なるほど、デュラン様が。ではお預かりしますね」
受付嬢が魔導水晶を手に奥へ。
「なぁ、聞いたか? デュラン“様”だってよ」
「へー、胡散臭い見た目してたけど、有名な人だったのかな?」
自分たちの出会った相手がギルドの職員に様付けで呼ばれている。
彼らにしてみれば、それだけでワクワクするのだろう。
そして。
「お待たせしました。まずはコチラが先ほどの依頼……ギルドからの合格祝いというヤツですね」
「ありがとうございます」
「そしてコチラが先ほどの魔導水晶……デュラン様から皆さんへの合格祝いですね」
「ありがとうござ―――えぇッ!?」
リーダーらしき竜人の少年の驚きの声。
「うわッ! すごッ!」
「やーん! すご~い! こんな金額、持ったことないよ!」
仲間たちも驚きの声を上げる。
それも仕方ない。
なにせ、6人全員がそこそこ良質の宿屋に数日は宿泊できる額を渡されたのだから。
彼らにしてみれば大金、それを事も無げに気軽に渡してきた。
「……スゴい、わね」
「だね……ど、どうしよう? 私たち、失礼なことしてな……ああぁ~……横取りとか言っちゃってるよぉ~……」
慌てるのも仕方がない。
受付嬢もすっかり説明を忘れているが、彼らはデュランを上位クラスのハンターだと勘違いしている。
ギルドで様付けされるほどの相手に気安い態度で接してしまったと後悔している。
「そんなに心配しなくても、デュラン様は悪い人ではありませんよ。ちょっと見た目と口調は怖いところがありますが。何はともあれ、合格おめでとうございます。これからがんばってくださいね!」
合格の喜びと、大金の困惑。
色々な感情で興奮したまま若きハンターたちが宿に到着した。
「なんというか……一流のハンターって、違うんだね。同じ魔導水晶なのに」
やはり話題は魔導水晶のものになる。
―――いずれは自分たちも、アレと同じ質の物を。
彼らの目標が決まった瞬間であった。