のんびり巡回、グラナーダ中央区・その2
住民の皆さんとの顔合わせ。
おおむね良好。
子どもたちからは案の定、数字のお兄さんと呼ばれることに。
大人たちの反応は微笑ましいものを見る目。
ついでに応援のひと声かけてもらってみたり。
うむ。
軍人さんと民間人の距離感、わりと近いね。
ちょっと気楽だけれども、彼らから見れば俺もいまは正規兵。
あまりだらしないところは見せられない。よ!
しかしながら、さすがは中央区。
広い。
新兵はまず、巡回しながら街の様子を覚えるのが仕事とのこと。
警戒しながら歩くのは、ひとまず先輩たちで構成された部隊にお任せで。
「兵士の数は少なくても、さすがに見回りもできねぇほどじゃないからな。焦らず、まずはお前たちがなにを護っているのかを知ることが大事ってな!」
護る。か。
軍に対しては全面的には信用してないけれど、それと住民の皆さんは別枠だからな。
そこだけは絶対に間違えたらアカンやつだよ。
少なくとも、軍服を着ている間くらいは。
それなりに責任もあるし、本気でね?
ぐるぐる街を回ってしばらく。
もうすぐお昼の時間というタイミング。
ベテラン部隊と鉢合わせ。
軽く敬礼をする俺ら。
任務中は略式でいいってのは楽だな。
「………。」
おっと?
ごっつい魔人族のお兄さんが近づいてきましたぞ?
……え、俺?
まさか、またなにか―――突然の爽やかスマイルッ!?
「フッ。テメェも番号残しか。安心しな、エスタリアじゃあ余所者だからって差別はされねぇからよ。過去になにがあったかは知らねぇし興味もねぇが、これからのことなら相談にのるぜぇ?」
ぐぐっと腕まくり。
あら、お兄さんも数字が残っていらっしゃる。
んー。
ぶっちゃけ流れがイマイチわかんないけれど。
とりあえずお礼、言っとこ。
少なくとも俺を気づかってくれているのはわかるし。
で。
アチコチに顔出して挨拶したりして1日が終わるワケなんですが。
てれって~♪
祝福タブレット! と、使い魔(虫タイプ)の出番デース!
情報収集、大事。
番号残し。
どうやら俺の想定していなかった意味がありそうだからね。
とりあえず悪い意味ではなさそうだから、放置でもよかったかもしれんけど。
まぁ、練習もかねてね?
ほら、俺ってばいまからイロイロこの国を調べないといけないしね?
フフフ……。
さぁ、ラジコン操作でレッツ諜報!
本当はオートでもよかったんだろうけど。
ほれ、リンクの切れた使い魔たち。
アレがどうなってるのかわかんないから。
直接操作で安全に。
『それでどこから調べるかねぇ? まさか宛もなく飛ばしても収穫は見込めんぞ?』
定番は飲み屋系かな?
番号残しに意味があるなら、どこかしらで話題になってんべ。
いざ!
………。
……。
…。
はい。
やらかし案件キタコレ。
番号残し、国外から来た人たちの身分証明的な意味が。
身元を国が保証してますよ的な意味が。
それだけなら別にいい。
が。
エスタリアのために全身全霊ガンバリマス宣言のような意味も。
……うぁ。
『忠義の証として、か。んん~~、なんというか……なぁ。何事もなければ笑い話で済ませてよかったやもしれんが……これはなぁ』
誰を信じるか。
誰を疑うか。
これから軍部の内情を漁ろうとしてる人間に……よりによって。
なるほどなー。
そりゃアッサリと番号残せたワケだよ。
消すかどうかの対応してくれてた術師のお爺ちゃん、そりゃ優しい目で微笑みもするだろうさよぅ。
『暗黙の了解ということは、おおよその連中に高らかに意気込みを語ったも同然―――いや、ならば……あの鬼人の女の態度は……?』
しかし、いまから消すのもそれはそれで―――女神さま?
『ん? いや……些事じゃて、気にするな。それでどうするかね』
うーむ。
ふーむ。
うむ。
これ、もしかしたら利用できるんじゃね?
逆に。
この状態でみんなに記憶されたらさ。
祝福で数字を隠してこう、イロイロと。
うん。
アイディアはまだ思い付かないけれど。
とりあえず……今日は寝るか。
まだ、焦る必要はない。
ナイフを取り戻しつつ、ついでに“オシオキ”もしつつ。
可能であれば平和的に、そうでなければ派手に楽しく旅立ちを。
考えること多いからね。
まずは目の前の仕事、真面目にやりますか!
ちなみに重罪人のコード番号は背中にある、というのは民間人も知っています。
そもそも重罪人を街中歩かせませんが。