サクッと合格、したけれど?
検定、終了。
もちろん合格。余裕でしたね!
いやー、余計なトラブルなくてよかったよ。
訓練用のダンジョンの奥で未確認の遺跡が突然見つかったとか。
こんなところにいるはずのない強力な魔獣が出てきたとか。
あれは! 伝説のナンチャラドラゴン!?
バカな、こんなところに~!
ちくしょう、試験は中止だ、みんな逃げろー。
……みたいなね。
長いこと軍が管理していただけあって、そんな感じの嬉しくない特殊イベントがなくてホント……よかった。うん。
正直、いっぱいいっぱいだったもの。
なんかみんな、俺に喋らせようとしてくるからさ。
できる限りのことはしたつもりだけど……所詮、俺の知識は娯楽作品の知識。
内心、不安で不安でしょうがなかったよ。
うん。
自分ひとりなら気にしなかった。
でも、自分の意見でここまで大勢が動くってのはね? 普通に怖い。
少人数ならフォローもできる。
けど、見えないところで動くのはどうしようもない。
祝福の加護で守ることもできたかもしれないけど……後々のことを考えると、きっとマイナスにしかならない。
成長を阻害するかもしれない、ってのは難しいところだな。
で。
特に合格についての式典みたいな面倒なのはないらしい。
ありがてぇ。
事務的な説明のほうが気楽だね。
まぁ、修了検定やってたの俺たちだけじゃなかったからな。
いちいち卒業式みたいなことなんてやってらんないんだろう。
訓練用の制服はそのまま私物扱いに。
丈夫で着心地もいいから部屋着にもオススメだそうな。
これ、なかなか便利ってか、いい物だよ?
さすがは軍備品、特殊な加工で防御力もそこそこにある。
と、いっても霊気のガードとセットじゃないと効果がない。
なので、一般に流してもそちらの恩恵は受けられないだろう。
んで。
制服の支給と私物の返還。
「これが3等武官の階級章になります。必ず制服の指定の場所に付けるようにしてください。紛失した場合も再度支給されますが、相応の“指導”は覚悟するように」
訓練生からもう1度、じゃないだけマシなのだろうか?
……いや、そうでもなさそうだ。
目の前のお姉さん、スッゴい悪い笑顔してらぁ。
「私も1度、経験がありましてね。といっても、魔獣との戦闘中での出来事だったので簡単な口頭注意だけでしたが……まぁ、そのときに、悪ふざけで失くしたおバカたちの指導の様子を偶然」
そんな、遠い目を……。
んー。悪用されたら大変だろうし、厳しいのは当たり前か。
「では、こちらが預かっていた貴方の私物になります。中身の確認を」
はいはーい。
どれどれ……。
………。
うん……まぁ……そうきたか。
無いね。
フローライトが、祝福と式陣を重ねて鍛えたナイフが失くなってらぁ。