どうにも怪しい雲行き……と、思いきや?
はい。
最悪のパターンってのは、だいたい当たる。
拠点では大規模な揉め事の真っ最中。
どうやら被害を受けたのは俺たちだけではないらしい。
不良部隊が3つ、結託して略奪しまくったようだ。
素材はすでに納品済み。
連中はめでたく検定合格ラインを突破。
もちろん奪われた側がそれを納得するはずもないが……。
「だからよ~? オレらが納品した素材がテメェらの物だったって証拠はあんのかよ?」
きた~。テンプレートなセリフ~。
実際、証明する方法がないから困ったもの。
肝心の教官たちは……あーあ。知らんぷりかい。
やっぱりこれもルールの範囲内の行動か。
なんてこったい! ……と、思う反面。
あるいは、俺が甘過ぎるのかもしれない。
教官たち、ガチガチの現役軍人。
そして、エスタリアはブルム帝国とはバチバチに交戦状態。
ついでに、4国同盟とも小競り合い多発なう。
考え方がそもそもね、訓練生よりはるかにシビアなのかも。
いや。でも。
うーん……。
それで納得しろと言われて素直に納得できるかは別なワケでして。
別に、俺も略奪のマネしたいとは思わんけどさ。
「不満だと全身で語っておるな、フェイスコードくん。だが検定についてのルールは散々説明したからね。彼らの行動はこの場においてはなんの処分対象でもないのだよ」
ぐぬぬ。
やはりそう言われると―――この場においては?
「ふむ。やはりキミは他の訓練生とはひと味違うようだね。よく気がつくのはとても良いことだ。ところで諸君、因果応報という言葉の意味は知っているかね?」
ご年配の教官殿のひと言。
爆発まで秒読み状態だった仲間たちがポカンとしてる。
「当たり前の話だがね、キミたち訓練生は修了検定が終われば各地に配属されることになる。と、なれば……上官たちも訓練の様子が気になるのも当然だと思わんかね?」
新しく自分の部下になる人間。
そりゃ気になるだろうけど……。
話の流れが変わり過ぎで―――あ。
このパターンは。
ざわざわと。
賑やかさの雰囲気が変わったな。
喧嘩腰だったのから、もっとこう……困惑したような。
……あー。
なんか来てる~。
遠目に見てもちょっと豪華な軍服を中心に。
左右とその後ろを強そうな皆さんが。
どこかの偉い指揮官が―――ウゲェッ!?
あれは、特務大将の階級章ッ!!
ひぃ。
完全に気のせいなのに腕が痛いッ!
「レグルナルヴァ閣下との一件は知っているが、難儀なことだな。気持ちは多少は理解できるがね。安心したまえ、リーフェルジルヴァ閣下はあそこまで苛烈な御方ではないよ」
……良く見たら。
いや良く見なくても普通に別人だわ。
なに?
俺を蹴っ飛ばし為されました姫君のお姉さん。
ほー。
たしかに銀髪狐耳でお揃いだが。
不良部隊へ向かってゆっくり近づく特務大将閣下。
さすがに連中も緊張するらしい。
しかし……いったいなにを始めるのやら?