まさかの奇襲は身内? から
気持ちが楽になると、視界も変わるといったな?
ふふふ。
視界が変わったからといって、見落としがないワケじゃないんだぜ!
「み゛んな゛ぁぁぁぁッ! ごべんなざいぃぃいい~ッ!」
「ちくしょう……ちくしょうッ!! アイツら、全部だッ! 全部……素材も、魔導水晶も奪って……ッ! クソがぁッ!!」
敵は魔獣だけではなかったらしい。
他の……不良部隊からの襲撃。
タイミングは完璧。
完全に狙われていたな。
「探索の切り上げる少し前、今日の稼ぎが山積みになっていたところを、か」
「チッ。出口が近いからって、魔力のヨエーのに任せてたのが裏目に出てたか」
「……申し訳ありません。ボクたち輸送班が、もう少し早くたどり着いていれば」
「いや、あの量を一気に運び出したのですから、向こうも徒党を組んでの強奪だったのでしょう。どのみち数の不利は避けられなかったかもしれません」
正直なところ。
妨害される可能性は考えてた。
俺、目を付けられてたし。
ただ。
てっきり俺を直接狙ってくるだろうなとばかり。
甘かったな。完全に。
「それはたしかにデュラン、お前の油断だな。そんな上等な気概があるのなら、そもそも見苦しい逆恨みのようなことはしないだろうさ」
「そうよねぇ。自分に実力がないって自覚してるからぁ、それで妬んでるんだもんねぇ」
丁寧なしゃべり方だけど、怒ってるのが伝わってくる。
そりゃそうだ。
不幸中の幸い……と、言っていいのか。
死人は出ていない。
そこまでバカではなかったらしい。
危ない。
さすがに祝福の加護でも死者甦生なんて……え? できんの?
すげぇ。女神すげぇ。
うん、危なかった。
そんなもの使った日には、間違いなく未来がヤバい。
……と。まぁ命があるだけありがたい―――とも、ちょっと難しい状況。
何人かはもう、検定中は復帰できない。
ケガの問題ではなく。
霊気のガードを“完全に”破壊された後遺症。
外傷は大したことなく、術式で治したけれど。
意識が戻るまで2日くらい。
霊気が戻るまで1週間くらい?
そこから戦闘濃度まで高めるためのリハビリ……と。
とても間に合わない。
襲撃者がアレな連中だったのとは別に。
役目を果たそうとしてくれたんだろう。
限界まで。
……はぁ。
部隊の空気が最悪です。
ヤッバ~イ☆
いや、身内同士で責任の擦り付けとかではないんだよ。
意外や意外、連帯感大事にしてくれている。
ただ。
なにが困るって、目的が復讐に切り替わるのが困る。
違うんだよ。
いま、このタイミングでそれに全力を費やしても仕方がないんだよ。
みんな落ち着け。
それで検定がオシャカになったら、それこそバカみたいじゃないか。
いまは、まだ。
忘れろとはもちろん言わない。
それでも、だ。
「……正論だな。顔文字の言ってるこたぁ、ムカつくくらい正論だ。いいだろう。アタシらだってバカみたいに突撃しないって約束で合流したんだ、いまは耐えてやるさ。でもな」
そりゃあ……あとで、ね?
とりあえず、外に出ようか。
教官にも相談する必要がある。
ただ。
あまり期待はしていない。
なぜなら。
検定の説明で、他の部隊から素材を奪ってはいけないという注意がなかったから。
たま~にあるじゃん、そういうの。
気がつかなかったほうが悪いってパターン。
これ。
当事者になると、こう……まぁ不満だよなぁ。
俺、冷静でいられるだろうか?
いやまだわかんないけどさ。
教官たちの判断、どうだろうなぁ。