ザクッと心に刺さる事実
時間稼ぎスタート。
いわゆる囮。
されども囮。
タウルス変異種2匹、コイツらに俺を“敵”と認識させ続ける必要がある。
そのためには、専守防衛というワケにはいかない。
祝福なしで、格上の敵に。
……フツーに怖いデース。
勇気を~出して~……懐にッ!
「―――!」
反応。
左腕の防御。
剣が命中したとこの妖気のガードは少し削れたが、ダメージはゼロ。
バカ正直に正面から斬りかかっただけだし、防がれるのは当たり前か。
もちろん、無意味に突撃したワケじゃないよ?
「―――、―――!」
よし。
俺を見たな?
無事、敵として認めてくれたようだ。
うむうむ。
あとはその石柱の攻撃を避けながらチクチク反撃を―――とッ! 思ったんだがなぁッ!?
「―――。―――ッ!」
やるねぇッ!
いきなり大振りの攻撃はしてこないか!
石柱を抱えたまま、左拳での薙ぎ払いときたッ!
やっぱりゲームのようにはいかないか。
………。
まったく。
ちょっと考えればわかること。
武器を持ってるからといって、それしか使わないなんてことはない。
そんな当たり前のことを今までまともに考えてこなかったんだな。
情けない。
祝福に頼りきりにならないようにと思っていたけれど。
本当に思っていた、それだけ。
ふーむ。
己を知るという意味ではエスタリア、大当たりだな。
そして、今なら断言できる。
幻想種との戦い。
99パーセントは女神さまの加護の力。
残りの1パーセントは運が良かっただけ。
あの戦いに“俺”の要素は皆無だったねぇ~。
……うん。
自称ベテランの発言、なおさら恥ずかしいですハイ。
ま、自己嫌悪に浸るのはあとでいいや。
いまは目の前の牛さんをなんとかするべ。
もちろん、いざとなれば祝福使うけど。
そんなん……俺のプライドより人命優先なのは当たり前よ?
動き、見える。
よし。
もう一度、思いっきり―――特攻ッ!!
からの~!
術式“炸裂する氷の槍”ッ!!
「―――、―――ッ!?」
狙ったのは目の前のタウルス、ではなく。
その奥にいたもう1匹。
ふふふ。
いま、他のみんなのとこ行こうとしてたね?
見逃さないんだな~、これが!
さてさて、これでめでたく2匹とも俺をターゲット。
正直。
すっご~く怖いッ!!
慢心しきってた事実を確認したばっかりだからなぁ。
しかしいまさら逃げるワケにもいかない。
自業自得ですね!
とはいえ。
パンチは回避できる。
あとは石柱の一撃がどうなのか?
早いところ使ってほしいんだけども。
……む?
なんか、雰囲気が……。
くるか―――ッ!
「―――、―――ッ!」
うおッ!?
「―――、―――ッ!!!」
「デュランッ!?」
「おい顔文字ッ!! 生きてるかァッ!?」
大丈夫だッ! そっちに集中してろッ!!
……くぅ~ッ!
奥にいたタウルス。
妖気をそのまま飛ばしてきた!
飛ばしてきたっつーか、なんだろう、妖気の波動をぶつけてきた。
ダメージはなかったけれど、受け止めた瞬間をもう1匹がドカンッ!! ってな。
いやぁ~、石柱の一撃、なかなかの衝撃でしたね!
まぁ、霊気のガードは壊れなかったし。
特にダメージもなかったし。
まだ慌てるような段階ではない。
………。
お姫さま。レグルナルヴァだっけ?
あの子の蹴りのほうがはるかに……死ぬかと思ったな。
タウルス、当然だけど俺を仕留めるつもりだろう。
妖気の気配が攻撃的だから。
しかし、それでも防ぐことはできた。
単純な体重差というか、質量の差で吹っ飛ばされたけれど。
そんな魔獣の手加減なしの、それも武器アリの一発よりも。
お姫さまのお戯れのほうが桁外れに痛いって……。
特務大将閣下。すげーわ、やっぱ。
しかしこれは朗報。
反応が遅れて避けられなくても、霊気のガードを固めれば耐えられる。
やっぱり運が味方をしてくれてるな! 俺!
そう。
だからそれだとさ、いつか死んじゃうんだってば……。
と、とにかく!
強気の選択肢が許されるのは大きい。
かな~り泥臭い戦いになりそうだけど……望むところだぜッ!