じっくり攻略、訓練ダンジョン・その2
おさらい!
この世界の魔獣との戦闘について!
まず、俺が最初のころにしていた勘違い。
えー、魔獣くん。
基本的に人間の命を奪うことを目的としておりません。
基本的にね。
魔獣たちの目的は人の血肉ではなく、内包する魔力。
それをエサにするワケですね。
なので魔獣に襲われたからといって、かならず死傷者がでるとは限らない。
限らないけど……まぁこの世界、魔力を失うとあらゆる物体は崩壊するというルールがある。
だから俺の身体も女神さまが作り替えてくれたワケで。
つまり。
根こそぎ魔力を奪われたら普通にお陀仏。
あと、戦闘の結果として普通にお亡くなることだってある。
命懸けになるという事実はな~んにも変わんないね!
とはいえ。
こんだけ人がいるんだもの、お互いにフォローし合えばなんとかなるでしょ。
とりあえず大まかに準備して出発。
初日だからね、まずは魔獣との戦闘経験のないヤツらの経験値稼ぎから。
浅いところで様子見をしつつ、少しずつ奥に進みましょ。
遺跡の入り口は複数箇所。
そうとう広いのだろう。
じゃなきゃ、数百人を同じ迷宮に送り出すようなことはしないだろうし。
ざっと、20部隊くらい?
「ボクらだけで……第241訓練兵団だけでこの数ですからね。他の同期は別のダンジョンへ向かったことを考えると、ずいぶんと賑やかな修了検定ですよ、本当に」
「それだけライバルも多いってことなんだが……時間はあるからな。顔文字のいう通り、冷静にいこうぜ」
実際、心理的に焦りたくなる雰囲気ではあるからね。
間違いなく俺たちが1番のんびりしてる。
他の部隊はこちらを見て色んな反応。
心配そうに見てくるお人好しもいれば、バカにするように笑ってくる部隊もいる。
ほらそこ。
いちいち反応するんじゃないよ。
初日だよ、まだ。
焦ることになんの意味もないよ~。
浅い階層。
まずは戦闘経験者が前に出て様子見。
出てきた魔獣はファンタジーの定番。
「小型二足種、ゴブリンタイプ。人型の魔獣が多い遺跡ダンジョンでは1番戦いやすい相手ですね。わたくしたちが出張るまでもない相手ですが……」
索敵と警戒は怠らず、ね!
「行きますッ! てぇぇいッ!」
「しゃあッ! やってやんよッ!」
「痛かったら! ゴメンなさぁいッ!」
シドニア君を含め、若人たちを中心に戦闘開始。
戦力的には割りと余裕はある。
俺のレベルを35とすると。
他のダンジョン経験者のふたりが27くらい。
ユリギナ他、魔獣との戦闘経験者の5人が13~18らへん。
そして他のメンバーが7前後。
対するゴブリンは4~9くらいかな?
集団ではあるけれど、連携がとれてるワケではない。
チームワークのぶん、こっちが有利。
とはいえ、油断大敵だからね。
俺は俺にできるフォローをしましょ。
意識を、龍脈へ。
魔力の流れを読んで、魔獣の傾向を探る。
ゲームならダンジョン内のモンスター、出現パターンが決まってるけれど。
たまに設定されてるレアモンスターは別枠でね?
しかし異世界ではそうもいかない。
今は目の前にいるのはゴブリンだが、いきなり後ろからタウルス系が出てくるかもしれない。
タウルス。もしくはミノタウロス。
説明不要の、色んなメディアに初心者キラーポジで多々登場する牛の化け物。
あるいは、人型以外の強力な魔獣が出てくることもあるだろう。
バッドステータス付与をしてくる魔獣なんかが出きた日にゃ、もうえらいこっちゃなんだぜ?
ともかく。
そういう連中の奇襲に備える必要があるワケです。
祝福なしでもある程度は魔力と妖気をつかめるようになったからね。
正確には判別できないけれど、まずはゴブリンタイプ以外の気配が出たら警戒すればよし。
あと、レベル換算で15らへんを超えるのが出てきてら撤退するよう促してみるか。
殿軍はベテラン3人で。
……ベテラン3人。
『自分で恥ずかしがるくらいなら、自称せねばよかろうに! あっはっはッ!』
うるへー。
祝福ありきでしか攻略してなかったから、ちょっと後ろめたいだけだい!
「デュラン、どうやら初戦は勝星を獲たようだな。魔導水晶はどうする? 評価対象以外の物も物資と交換できると言っていたが」
んー。
最低限の補充以外か。
なかなか興味深いラインナップだったけど。
俺としてはメンバーに吸収させたいな。
どうよ?
……満場一致、賛成!
え、いいの?
「まぁね~。便利な道具も使い手次第だからねぇ~。それにさ、デュランが霊術使えるんだし、急がなくてよくない?」
そうきたか。
別に術式は祝福関係なく使えるからいいんだけどさ。
ともかく。
無事、部隊が強化されました。
ゴブリンたち、それなりの数がいたからね。
なかなかいい感じに底上げされそう。
ふむ。
今日はゴブリン狩りで終わってもよさそうだ。