ほどほどな訓練日和・その3
モヤモヤした感情を押し留めつつ、訓練の日々。
もっとも。
そんな俺の杞憂を嘲笑うかのように、な~んにも起きなかったけどね!
訓練兵団の中のワルガキどもからは相変わらず睨まれてるけれど。
そっちはまぁ、別に無害だし。
なんなら祝福なしのナチュラルパワーでまとめてブッ飛ばせるし。
クラスCのランク上位くらいになったかな?
魔導水晶を取り込まない、地道な鍛練はレベルアップの速度がヒジョ~にゆっくりなのです。
「さて、そろそろ貴様らにも実戦に出てもらう。といっても軍の管轄にある迷宮に潜ってもらうだけだがな。すでに財宝の類いは全て回収してあるから期待するなよ? ガッハッハ!」
いわゆる修了検定のようなもの。
4グループくらいのクラン……じゃない。部隊を組んでの素材集め。
検定期間中に規定量を超えていれば合格。
未達成、あるいは続行不可能なほどの重傷を負えば残念、また次の機会までお預け。
後発の訓練兵団に再編成。
「武器は支給されたもの、その他は現地調達で、と。宝物とかはないって言っていたのに、武器なんてあるんですかね?」
んー。
例えば、魔獣のホネとかで組み合わせてとか?
なんなら一掴みの石だって、ないよりはマシだろうし。
「あとは、携帯食料と応急処置の道具か。ケガはデュランに治してもらえるとして、食料だな。これも不足分は現地調達になるだろう」
「うぅ~ん、そうなると、毎日がお肉になりますねぇ。さすがに飽きてしまいますよぉ?」
そこは植物系の魔獣に期待だな。
迷宮の種類によってはけっこう……遺跡ダンジョン? う、うーん……。
植物系の魔獣、出ますかね?
教えられない?
情報を集めながら攻略するのも訓練のうち。
はい。
と、いうワケで。
さっそく遺跡ダンジョンの前までハイキング。
おぉ、なんか村っぽいものがある。
ルジャナの氷剣吹雪……アレは正確には吹雪じゃなくて、精霊の結界なんだけど。
あの中にあった集落よりは控えめだけど、生活感に溢れている。
安心できるね!
修了検定中はここから出ることは禁止。
もちろんギブアップするなら別。
軍から抜けたいのも止めはしない、と。
最低限の衣食住、そして規定装備の補充もできる。
ほほー。
至れり尽くせりじゃないですか!
「そう思うか? なら結構だ。魔獣と戦うならもっと環境を整えろと不満を吠える訓練生もいるからな。そういう連中には―――」
常に最善の状態で戦えるワケがない?
「クックック……わかってるじゃねぇか。もちろん、そうならないように兵站部のヤツらが頑張ってくれてんだがよ。それに甘えていざというときに動けませ~ん、じゃ困るからな。これも訓練だよ。く、ん、れ、んッ!」
ニヤニヤ笑うヤンキー教官。
その視線は俺にではなく、まさに文句を言おうとしていたグループの方向へ。
いやぁ。
この環境、けっこう最善に近いと思うんだけれど。
いや、違うな。
そう思うのは。
きっとそれは、俺がいざとなれば祝福が使えるからだ。
ふぅ~! 危ない危ない。
また慢心するところだった。
もちろん、一緒に行動するチームに危険が及ぶなら、そのときは祝福を発動させるつもりでいる。
人命優先、いのちだいじに!
だが女神さまの加護に頼る前に、まずはギリギリまで粘って見せなければ。
そのための訓練、そのための軍隊体験。
よし。
気合いリスタート、頑張りますかッ!