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ちょこっと術式指南、水晶召喚式・その2

 説明、再び。


「~~~ッ!!」


 術師、悩む。




 えー。


 まぁ、なんだ。


 認識の違いというか、常識の違いというか。


 この世界の人にとって、魔導水晶はどうしても“燃料”なんだね。


 電池とかバッテリーとかそういう物品。


 だから、魔導水晶そのものをマジックアイテムみたいに使うという発想が存在しなかったらしい。


 そう考えると、俺だって電池単体で光るとか言われてもハテナが頭を飛び回るかもしれん。


『あるいは、文明の初期のころは存在したのやもしれん。それが、利便性だったり、あるいは誰でも扱い易いようにと研鑽を繰り返した結果、淘汰されたのかもしれんのぅ』


 なるほど。




「……いえ、その、取り乱しました。申し訳ありません。えーと、それで……あぁ、まぁその、もしよければ実践していただけますか? 一応、魔導水晶は用意してありますので」


 ようござんす。


 でもその前に、周囲におります監視役の皆さまよ。


「おう? そりゃ、俺らぁ正規兵だからな。戦闘なら問題ないが……ほぉ~、たしかにここで魔獣が暴れるのは困るな。よしよし、そういうことなら任しておけやッ!」


 万が一に備えて。


 可能性がゼロでないならムダではないでしょ。




 と、いうワケで。


 兵士の皆さま、抜剣。


 術師の皆さまも杖やら魔導書やらを構え。


 少将閣下も刀を……刀?


「祖父母がそういった文化圏の出なものでな。最初は戯れに習っていたが、これがなかなか奥深くて……いや、面白くてな。構えにも様々な流派が―――いや、この話は長くなる。また機会があれば」


 おっと。


 クールで実利的な人かと思っていたけれど。


 好きなことだと口数多くなっちゃうタイプか。




 ……うむ。皆さん準備オッケーだな。


 では。


 式陣、展開ッ!




「―――。―――?」




 おぉ~。小型のラプトルとな。


 この辺では盗賊トカゲと呼ぶらしい。


 集団で行動する習性があって、しかもかなり賢いと。


 うん。


 俺の知ってるラプトルのイメージまんまだわ。


 どれ。


 ほ~ら、おいで~?


「~~~♪」


 よしよし。


 ふーむ、ルジャナの毒トカゲに比べると、ちと硬質な手触り。


 でも、なんか、この感触……。


 あー、うん。バアちゃんの家にあった座布団みたいな。


 ザラザラするけど悪くない。




「……そんな、アッサリと……我々の……苦労は……いえ、お気になさらずに。はい、大丈夫です。固定観念に囚われていた我々が未熟だったのです」


「感謝するぞデュラン・ダール。これで召喚式陣の、そしてゆくゆくは召喚術式の研究も多少は進展を見せるだろう」


 それはなにより。


 ただ、ひとつだけ言っておかないとイカンことがある。


 それは、俺はまだこの方法で失敗したことがないということ。


 こう言うと自慢に聞こえるかもしれないけれど。


「いえ、わかります。つまり、失敗する条件、そして成功する条件がまだ未確定ということでしょう? もちろん、失敗したときにどのような事象が発生するのかも」


 話が通じるって素敵ね!


 どうか充分に気をつけて。


 仮にそれで国中に暴走した魔獣が解き放たれても、俺ゃ知らんからね。


 だってこの方法が安全だなんて、一言もいってないし。


 子どもじゃないんだから、リスクとリターンの管理くらい考えられるでしょう?


 まして、魔導院という大きな研究機関で実験するんだもの。


 あとからお前のせいで~とかはナシで頼むよ。


「貴方が他所の国で、どのような魔導院の学者と出会ったのかは存じません。が、少なくとも我々はそこまで恥知らずではありません。ひとりの術師として、エスタリア霊術兵団の誇りに誓って、恩を仇で返すような真似はいたしません」


 それはなにより。


 大事なことだから繰り返すけど、くれぐれも気をつけてね?




 ちなみに。


 盗賊トカゲは俺が引き取りました。


 オオカミとラプトル。


 組み合わせ、見栄えはいいかもしれないな。

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