ほどほどな訓練日和・その1
昨日も走って。
今日も走って。
きっと明日も走って。
それでも日々ランニングの時間は減っていく。
そしてそのぶん、戦闘訓練の時間が始まったね。
まずは剣の使い方から。
「エスタリアの正規軍装では、立場や部署に関わらず帯剣することになっている。それは式典などにおける儀式的礼装的な意味合いの場合もあるが、もちろん1番の目的は防衛手段である。槍や弓とは違い、場所や状況を選ばず使えるというのは、それだけで価値があるのだ」
そして渡される、刃を潰した鉄の剣。
ゲームやマンガで見るのより短め。
そして幅も広くはない、ような気がする。
ハンターたちが使ってたヤツより全体的に小ぶりだな。
あれかな。
集団で戦う前提だからかな?
あとは、建物の中でとか。
で。
「デュラン、ひとつ手合わせ願おうか?」
ユリギナからのお誘い。
別にいいけど、俺、剣なんて使ったことないぜよ?
「安心しろ、私とてそこまで扱いに慣れているワケじゃない。小型の魔獣を少し相手にしたことがある、という程度さ」
以前はハンターだった?
クラスEのパーティーで。へー。
なんでわざわざ軍に……リーダーの恋愛トラブルが原因で解散しちゃった?
そりゃ、また……なんつーか……。
平和的に決着はしたから大丈夫?
そうか……まぁ、人間だもの。ハンターだって恋くらい芽生えるよね!
巻き込まれたメンバーは大変だったろうけど。
そんでもって。
現在、我ら第241訓練兵団はふたつのグループに。
霊気のガードを使えるかどうか。
一般人でも体力仕事の人たちなんかは、霊気による身体能力のブーストはそこそこ使っている。
が。
戦闘濃度まで高めて鎧のように身に纏うのには慣れとコツが必要。
持続させるには霊気のコントロールも必要だし。
ただ、俺でも霊気で遊んでいる間にコツは掴めたので、そこまで苦労はしないと思う。
さて。
どうやらエスタリアの教育方針は“習うより慣れろ”らしい。
まずは手合わせしてみろという。
まずはやってみて。
体験しなければ指導しても理解しにくいだろうとのこと。
教官たちは見てるだけ。
本当になにも口出ししないつもりみたいだな。
ふーむ?
となると。
いくら素人とはいえ、やみくもに振り回すのも考えもの。
単純に危ないし。
なにか参考にできる動きが欲しいところ。
んー。
……お、そうだ!
日本でやってたゲームの動きでもいいかな。
なにもないよりマシだろう。
都合よく、キシドーブレードってなアクションゲームやりこんでたんだよね。
思春期だったからね、ゲームキャラの動きとかマネしちゃうよね。
しかし人生とはワカランもので、黒歴史がこうして役に立つこともある。
異世界も……まぁ、悪くないな!
「……ッ! デュラン、お前、本当に素人なのか? ……ほぅ、とある国の騎士を、見よう見まねか。なかなか、面白いことをッ!!」
万人向けの主役キャラのモノマネ。
なかなか好評でなにより。
本当はもっとトリッキーなキャラとかも好きなんだけど。
それをいま、ここでやったら……まず最初に俺がケガしちゃうだろうな。
さぁ、本気のチャンバラ遊びといこうか!