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きっちり連帯責任も

 騒いでいるのは数人のガタイのいい男たち。


 食事の内容に不満タラタラ。


 量が少ないとか。


 メニューが気に入らないとか。


 肉を食わせろとか。


 鶏肉、入ってますけど?


 うん。


 まぁ連中が言うのはそういう意味じゃないことくらいわかるけどさ。




 対する教官はまったく動じず。


 淡々と食事を済ませるように指示をするだけ。


 うむ。大人の対応ってヤツだ。


 まぁ、有象無象の新人を教育する役目だからね。


 その辺は考えて人を割り当てているだろう。


 まったくもう。


 あのはねっ返りたちも、言葉で諭してくれてるうちに素直に引き下がればいいのに。






「ケッ! こんな貧相なメシなんざ、こっちからお断りだぜッ!!」


「……ほぅ。そうかそうか。そこまでして食事を拒否するか」






 ………。


 ………ハッ!?


 お前ら! 急いで食い終われッ!


「えっ、ちょ、デュランさんッ!?」


「急にどうしたんですかぁ?」


 この流れはよろしくない!


 ―――ッ!


 ―――ッ!!


 ―――ふぅ。ごちそうさま。


 なんだかんだ、周りのみんなも食事終了。


 さて?




「―――全員、作業停止ィッ!!」




 先ほどまで男たちと話していたときとは違う。


 いかにも軍人らしい、攻撃的な、強制力を持つ命令の言葉。


 俺は来るだろうと身構えていたけれど。


 そうでない他の人たちは動きが止まってますな。


「撤収開始。急げ」


「「ハッ!!」」


「「えッ!?」」


 ほーら見ろ。


 その場にいた訓練生の目の前から、無情にも食事が撤去されていく。


 当然のように不満の声。


 返ってくるだろう教官の言葉はおそらく。




「連帯責任だ。今朝がたも言われただろう? 貴様らはチームであるとな」




 ほーらねッ!


 当然、俺の前にあるトレーも兵隊さんに取り上げられる。


 空だけど。


「顔文字、テメェ、なかなかの判断力してるじゃねぇか。感心感心」


 なんか褒められた。


 やっといてなんだけど、注意されるか指導されるかも考えていたんだけど。


「あぁん? ンなこたしねぇよ。与えられた条件の中で、自分に利益があるように動く。それを咄嗟にできるのは悪くねぇ。ついでにオレの好みで言えば、周りの連中にも声をかけたのはプラス評価だな!」


 ルール違反しなければ工夫の範囲ってことかな。


 作業停止の後に同じことしてたら指導(物理)だったらしい。




 なんて話をしていたら。


 なにやら鈍い打撃音が……あ。


 まぁ……文句を付けても空腹には違いなく。


 だから、食事を取り上げられたことに対して騒いでいるのは聞こえてたけど。


 雑に引き摺られていく訓練生たち。


 アホだねぇ。




 そしてかわいそうなのは、アイツらより後ろに並んでいた人たち。


 ひと口すら許されないまま退場。


 危なかったなぁ。


 たまたま早めに列に並んでいたからよかったものの。


 タイミングがズレてたら俺も腹ペコのまま寝ることになっていたな。




 騒いでいた連中がお休みさせられたのを見たからだろうか?


 不満を声に出す訓練生は誰もいない。


 渋々と食堂から出ていく。


 その足取りはもちろん重い。


「アブねぇアブねぇ。顔文字が声かけてくんなきゃ、オレらも食いっぱぐれてたな」


「ホントだぜ。サンキュー、フェイスコード。なにかあったらまた頼むわ」


 他のグループの連中からお礼の声が。


 ただの偶然というか……たまたま前世のイメージが役に立っただけなんだけど。


 とりあえず期待するなとだけ返しておいた。




「はぁ……こんなこともあるんですね。明日からの訓練、大丈夫なんでしょうか?」


「無意味に逆らうような真似さえしなければ問題ないだろうさ。もちろん、保証はしないが」


 俺たちが素直にしていても、反抗期なお年頃どもがなにかやらかせば。


 十中八九、また連帯責任と言われて罰則だろうな。


 そうなる前にそういう連中に対応して……いいのかなぁ?


 喧嘩両成敗とか言われたらヤダなぁ。






 んで。


 翌朝、まさかの朝食抜き。


 マジかよ。


 昼はちゃんと出たけれど……さすがに、きつかった。


 しかしまぁ、これで後々で食事に文句を付けるヤツが出なくなるなら……良しとしておく、か?

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