のんびり訓練生活開始・その1
私物を預けて訓練生用の服を。
迷彩柄のズボンに濃いグレーのシャツ。
うん、いかにも軍隊って色合い。
ふむ。
着心地、良好。
いいじゃないですか。
「あ、デュランさん! デュランさんも登録が終わって……顔に?」
馬車の中でちょこっと会話した少年。
シドニア君だったかな。お疲れさん。
君は左腕にしたんだね。
「あ、はい。僕のコードは[C-5593]です。今度からはこれが名前の代わりになるんですね」
こうして個人で呼び合うぶんには黙認されるみたいだけどね。
「別に我々教導員も呼ぶときは呼ぶがな」
敬礼!
ふむ。
竜人族の女性軍人さん。
カッコいいね!
しかし……。
「どうした顔文字。私の顔になにかついているか?」
顔文字?
あぁ、顔文字ね。俺のことか。
いえ、その襟の階級章、これから覚えなきゃいけないのかなと。
「ん? あぁ、それならキサマたちが心配する必要はない。どのみち軍部内でのヒエラルキーではキサマたちは最下層だからな。私のような制服相手には常に敬礼しておけばいい。たしかに細かい規則もあるがな、そんなものは後回しだ。訓練生の待遇に見合わない要求などせんよ」
教官っぽい人の言葉に安心するシドニア君。
甘い。
待遇に見合わない要求はしないだけ。
つまり、訓練生に対して妥当と思われる要求は容赦なく飛んでくるだろう。
油断させておいて、後からガッツリとシメ上げるかもしれんぞ?
「えぇッ!? そんな、その、デュランさん、それはさすがに失礼じゃ―――」
「クックック……顔文字、キサマ、ちゃんと私の言葉を聞いていたようだな。褒めてやろう」
ほーらね。
そういうことだよシドニア君。
心配そうな顔してるとこ悪いけど、諦めようね!
「さ、覚悟はできたな? できてなくても選択肢なぞキサマらには存在しないがな。ついてこい。部屋まで案内してやろう。……ん? あぁ、私が案内することに特別な意味はない。ただ業務の気分転換に散歩していただけだからな」
施設は木造建築。
でも、たぶん壁の内側に式陣が刻まれている。
かすかにだけど、霊気の流れを感じるね。
廊下を歩いて歩いて。
いくつかの棟を素通りして。
ほー。
ここが宿泊施設か。
で……一部屋が5人組。
すでに3人決まってるところに入ると。
「……ふむ。ここでいいだろう」
名札の類いは無し。
ただ、部屋の中にいる人数を表している木札だけ。
実に簡素。
では。
お邪魔しま~す。
「おや、新入りさんですかぁ。これから賑やかになりますねぇ」
「……ふん」
「おやおや! なんとまぁ、男の人ですか! えへへ、これからヨロシクねッ!」
「……え?」
え?
女の子?